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単独で完結した閉じた空間になってしまいがちな体育館。スポーツ施設の在り方が再考されるなか、「地域に開く」をコンセプトに掲げ、街の日常に溶け込もうとする施設が2020年1月、JR秋田駅前に開業した。

 7年連続で全国ワーストの人口減少率を記録した秋田県では、地域活性化が喫緊の課題に挙がる。秋田市では15年から、県と市、JR東日本秋田支社が提携して、JR秋田駅を中心としたコンパクトシティー形成を目指した取り組み「ノーザンステーション秋田」を進めている。この取り組みの一環として計画されたのが「秋田ノーザンゲートスクエア」だ。

 「健康とスポーツを通じて3世代が元気に暮らせる街」を目指して、JR東日本秋田支社が線路沿いの自社用地を活用して建設したスポーツ施設だ。バスケットボールの練習専用体育館に小規模保育施設、事務所などが複合する。アリーナ内部を外に見せることを意識して、施設の東西面にガラス窓を設けている。秋田杉をアリーナ天井に活用したのも特徴だ〔写真13〕。設計はJR東日本建築設計と環境デザイン研究所が手掛けた。

〔写真1〕地域に開いたスポーツ施設
〔写真1〕地域に開いたスポーツ施設
2020年1月に開業した秋田ノーザンゲートスクエア。地域活性化に向けてJR東日本秋田支社が進めるJR秋田駅周辺の再開発事業の一環として建設した(写真:JR東日本建築設計)
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〔写真2〕ガラス窓から光が漏れる
〔写真2〕ガラス窓から光が漏れる
東側の開放通路からプロ選手の練習風景を見ることができる。アリーナを使用していない夜間でも明かりをつけている(写真:JR東日本建築設計)
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〔写真3〕秋田杉製材の構造材普及モデルに
〔写真3〕秋田杉製材の構造材普及モデルに
アリーナの天井は東西側の鉄骨造キールトラスの間に木造タイドアーチを架けたものだ。伝統工法を応用した仕口で一般製材を組み、使用する接合金具を削減した(写真:JR東日本建築設計)
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 体育館は主に、JR東日本秋田支社のバスケットボール部と、プロバスケットボールチーム「秋田ノーザンハピネッツ」が練習拠点として活用している。

 JR東日本秋田支社建築設備センターの二本柳徹氏は、「バスケットボールを通して施設の内外を結び付け、活気が生まれるような空間を目指した。同時に秋田杉によるアリーナ天井を見てもらい、観光資源として『秋田県らしさ』をアピールしていきたい」と語る。