2022年にはカタールでサッカーW杯(ワールドカップ)が開催される。主催するFIFA(国際サッカー連盟)は、サステナビリティーを大会開催の重要テーマとして掲げる。今回の新設スタジアムにも配慮を求めた。
アル・ワクラには先行して19年にZaha Hadid Architects(ザハ ハディド アーキテクツ)設計のAl Janoub Stadium(アル ジャノブ スタジアム)が完成。同施設をはじめ収容人数4万人規模で建設される複数のスタジアムは大会後、客席を半減させる。座席を発展途上国などに寄付し、スポーツ振興に役立てる。さらに、分解・輸送容易な建築システムによる再利用型のスタジアムの建設も進む(3ページ目参照)。
既に各スタジアムは完成あるいは完成間近の段階だ。その中でコロナ禍に見舞われた。先行する関連大会の延期や中止が続いている。東京五輪と課題を共有する大規模スポーツイベントとして対策の行方が注目される。
(3ページ目までの取材協力:篠田 香子=ライター)
伝統的な織物の帽子を参照
Al Thumama Stadium
(アル トゥママ スタジアム)
設計 Fenwick Iribarren Architects + AEB
ドーハのハマド国際空港の近くに立ち、旅客機乗客は円形スタジアムの姿を望むことができる。外装は、地域の男性が着用する伝統的な織物の帽子「ガフィヤ」をモチーフにデザインされている。アラブ全体の尊厳を象徴し、諸国のつながりを意識させる。大会後には2万人用に客席を削減し、上層のスタンド跡にはブティックホテルなどを設ける。世界的に著名なスポーツクリニックの開設も予定している。
全席撤去で新都市のハブに
Lusail Stadium
(ルサイル スタジアム)
設計 Foster and Partners
決勝戦用の8万席のスタジアムで、ドーハ近郊の新都市ルサイルに建設が進む。外装は、ファナール(ランタン)が投げ掛ける光と影のイメージや伝統的装飾をモチーフにデザインされている。大会後に、ほぼ全席を撤去。PTFE膜(四フッ化エチレン樹脂コーティングガラス繊維布)屋根が覆う大空間内に学校や住宅、商業施設、ヘルスクリニック、サッカー場などから成るコミュニティーハブを設ける。