低稼働の「ハコモノ」からの脱却が必要だ──。社内にスポーツ専門部署を設けて次世代スポーツ建築の在り方を追求している梓設計は、設計だけでなく、施設の企画にも積極的に関わっていく考えだ。
梓設計はスポーツ施設の企画・設計提案力の強化を目的に2020年10月、スポーツ関連のコンサルティングを手掛ける米Blue United(ブルー・ユナイテッド)と業務提携した。Blue Unitedは鹿島アントラーズの海外事業展開や大宮アルディージャの国際強化アドバイザーなどを手掛ける企業だ。
スポーツ市場の規模が大きい欧米では、スポーツ機能を核とする複合開発を都市運営の収益源にする取り組みが一般的になっている。梓設計スポーツ・エンターテインメントドメインの永廣正邦ドメイン長は、「海外の先進的な施設運営や収益確保のノウハウを吸収して、日本の地域づくりにどう生かせるかを検討していく」と説明する。
梓設計は次世代のスポーツ施設の在り方を追求するなかで5つのポイントを整理(下の図)。そこから抽出した「日常性」と「多様性」の2つのキーワードを重視している。
収益を確保するためには、必然的に試合の開催以外にも人が日常的に集まる空間を創出する必要がある。体育施設にとどまらない利用を想定し、柔軟に転換・更新できる空間構成が求められる。防災公園に併設する体育館などを手掛けてきた経験から、永廣ドメイン長は「スポーツ施設ではなく、サードプレイスを設計する意識で取り組んでいる」という。