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「多様な世代が集う」「地域活性化の起爆剤となり得る」。スポーツ建築の分野で、こうした観点は中核の事業者の間には共有され始めた。コロナ後も視野に収め、施設の企画や計画に携わる側が開拓を始める番が来た。

 「日本のスタジアムやアリーナは、スポーツ単一に近い目的でつくられたものが多い。それでは、限られたステークホルダー(利害関係者)しか関心を持ち得ない。旧来の在り方を変えなければ、新しいモデルは生まれにくい」。スポーツビジネス分野に力を入れるKPMGコンサルティング執行役員の佐渡誠氏はこう強調する。

 例えば、指定管理者としてプロクラブが公共スタジアムに関わり得るようになった。年間の試合日数は少ないので、稼働率や収益率が問題となる。「地域のファンや地場の産業と、どうつながるか。機能の複合は、避けて通れない」(佐渡氏)

 本特集で近年の潮流を概観したように、13年には日本政策投資銀行が「スマート・ベニュー」概念を提唱。さらにスポーツ庁が「スタジアム・アリーナ改革」に着手する中で、中核事業者の間では問題意識の共有が進んだ。そのときに、「複合要素となるコンテンツが圧倒的に不足している」と佐渡氏は語る。

 KPMGコンサルティング自身は、スポーツ機能をハブに包括的に地域を変える戦略を展開する。潜在的なステークホルダーを巻き込み、プロジェクトに実効性を与えるためのコンサルティングを手掛ける〔図1〕。現状、幾つかハードルがある。佐渡氏は、自治体の多くがプロクラブの誘致合戦をするほどの熱意は持ってくれない実情を課題の1つに挙げる。

〔図1〕多様なステークホルダーを巻き込む事業構築
〔図1〕多様なステークホルダーを巻き込む事業構築
KPMGコンサルティングが提示するスタジアム・アリーナのビジネスモデルのイメージ。スタンドアローン型から脱するという近年の志向はすなわち、潜在的な存在を含む多様なステークホルダーを巻き込む事業構築の必要性を意味する(資料:KPMGコンサルティング)
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