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創建時の姿を残す美術館の改修で、基本設計を手掛けた。設計者として関わった後、美術館館長に推されて着任。自身の事務所はパートナーを迎え、新体制に移行した。大学教授にも就き、還暦後の新たな人生にまい進する。
設計を手掛けた美術館の館長に、設計者自身が就任──。誰もが驚く登用劇で注目を集めた青木淳氏は2020年5月、コロナ禍でオープンを延期していた「京都市美術館」(通称、京都市京セラ美術館)の開館に館長として出席した〔写真1〕。正面ファサードの意匠は残しつつ建物の地下を掘ってガラスをはめ、開放的な出入り口や店舗などが連なる新たな“地層”を設けたのが特徴だ。
斬新な発想は、青木氏が自身の事務所出身で気心が知れた西澤徹夫氏と共に基本設計に取り組んだ結果だ。しかし、館長として開館を迎えることは想定外だった。「最初は断ったが、改修で得た知見を運営に生かせるならと思い返し、承諾した」。得難い経験とも思ったという。隔週で東京から京都へ出向く日々を送る。