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ベテラン設計者の活躍が目立つなか、建築界の既成概念にとらわれず、これまでにない空間を実現させる若手設計者が出てきた。設計へのアプローチ法に限らず、土木や景観との分野横断で新風をもたらす。

(写真:日経アーキテクチュア)
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山田 紗子(やまだ すずこ)
1984年生まれ。慶応義塾大学環境情報学部卒業、東京芸術大学大学院美術研究科建築専攻修了。2007~11年藤本壮介建築設計事務所勤務。現在、山田紗子建築設計事務所代表。2020年に日本建築設計学会賞大賞、吉岡賞、Under 35 Architects exhibition 2020 Gold Medalを受賞

 山田紗子氏(山田紗子建築設計事務所代表、東京都世田谷区)の設計で2019年に完成した住宅は、同氏にとって初の実作となった。3件が立て続けに竣工するなか、最もインパクトがあったのは「daita2019」。両親と共同で建てた自邸だ〔写真1〕。20年に入って、日本建築設計学会賞大賞をはじめ、3賞を受賞した。

〔写真1〕単管などが重なり合い奥行き感
(写真:高野 ユリカ)
(写真:高野 ユリカ)
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(写真:高野 ユリカ)
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山田氏の設計で2019年、東京都世田谷区に完成した住宅「daita2019」。三差路の角地に立ち、スチールのテラスや補強の単管などの間を縫って自転車や車を止めるスペースを配した。外部と住宅を緩やかにつなぐ緩衝帯となり、見たことのない景観を生み出している

生活や風景、体験に新奇性

 建築界だけでなく一般の人にとっても魅力的に映ったようだ。「今、進めているプロジェクトのほとんどは、この住宅が掲載された雑誌を見て、依頼いただいたもの。同じ設計を求めるのではなく、何か新しい提案を期待してくれている」(山田氏)

 山田氏は設計に当たって、毎回、これまでにない提案をする。「新しい生活、新しい風景、新しい体験……。その場、その場で思考を積み上げていく。統一したコンセプトは持たず、クライアントの生活などをとことん聞き込んで、豊かにできる提案を目指している」と山田氏は言う。

 三差路の不整形な角地に立つdaita2019では、2つのテーマに取り組んだ。まずは、建物と庭をいったん分けて、どうつなげるか。「両者が助け合いながら、環境の延長として風景を連続させてくれるようにしたかった」(山田氏)。もう1つが、建蔽率が抑えられた住宅地の中で、いかに豊かな外部空間を生むか。

 その答えがスチール製のデッキを単管パイプなどで補強した庭だ。塀はないが、車や自転車、テラス空間が一体となり不思議な奥行き感を生んでいる。この空間は道路と住宅を緩やかにつなぐ緩衝帯でもある。

 かつて山田氏が在籍した藤本壮介建築設計事務所の藤本壮介氏はこう評する。「人の居場所を、建築の既成概念にとらわれず、直接その本質から考えられるところがすごい」