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与条件に基づいて多様な設計案を自動生成し、設計者を支援するジェネレーティブデザインが、実用段階に入った。米Google(グーグル)の兄弟会社から大和ハウス工業まで、設計の自動化の最前線を追う。
英ロンドンのウェンブリーパークは、サッカーの聖地「ウェンブリー・スタジアム」で知られる再開発エリア。デベロッパーの英Quintain(クインテイン)は2004年に開発許可を得て以来、荒廃した工業地帯に商業施設やオフィス、住宅などを次々に整備してきた。次なる開発エリアは、スタジアム北東の12エーカー(約4万8000m2)の区画。2000戸を超える規模の賃貸マンションなどを建てる。着工は21年後半の予定だ〔写真1〕。
クインテインがかつて作成した設計案には、事業性と住環境の両立に課題があった。供給戸数を増やして事業性を高めようとすると、採光などに問題が出る。建物を高層にすれば戸数を増やせるが、影が増えてコストも増大する、といった具合だ。
広場を確保しつつ必要な採光性能を満たし、可能な限り戸数を増やすには──。複雑な問題を短時間で解くために目をつけたのが米Sidewalk Labs(サイドウォークラボ)。米グーグルの兄弟会社で、スマートシティーなどの都市開発に取り組むテクノロジー企業だ。
クインテインはこの区画の開発計画に、サイドウォークラボが20年10月にプロトタイプを発表したDelve(デルブ)と呼ぶジェネレーティブデザインツールを使用した。AI(人工知能)の一種である機械学習を利用し、与条件を満たす施設配置案を大量に生成。設定した指標に基づいて各案を評価し、優れたプランを提示する。