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大手ゼネコンも近未来の技術として開発にいそしむ建設3Dプリンター。北海道でコンクリート製品の製造・販売を手掛ける企業が、国内で初めて小規模建築物を「印刷」した。見据える先は海外市場だ。

 バクテリアを用いた自己治癒コンクリートやインフラ維持管理用のドローンなど、先端テクノロジーを貪欲に取り入れることで有名な會澤高圧コンクリート(北海道苫小牧市)。同社の會澤祥弘社長は、コンクリートと先端技術を掛け合わせたイノベーションにまい進している。

 會澤社長が育てようとしているのが建設3Dプリンター事業。「3Dプリンターは、コンクリートを型枠から解き放つ点に大きな価値がある」(會澤社長)と期待をかける。同社は2020年9月、ロボットアーム式のセメント系3Dプリンターを用いて北海道深川市の自社工場の敷地内に公衆トイレ2基を建設したと発表した〔写真1〕。

〔写真1〕曲面も凹凸も自在に施工
〔写真1〕曲面も凹凸も自在に施工
會澤高圧コンクリートが3Dプリンターを用いて建設したトイレ。曲面の壁に複雑な凹凸をつけた。写真右手の人物は、グループ会社のアイザワ技術研究所で技術開発を担当している東大智主任研究員(写真:日経アーキテクチュア)
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會澤高圧コンクリートが導入した建設3Dプリンター(写真:會澤高圧コンクリート)
會澤高圧コンクリートが導入した建設3Dプリンター(写真:會澤高圧コンクリート)
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トイレの外観(写真:會澤高圧コンクリート)
トイレの外観(写真:會澤高圧コンクリート)
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 2基のトイレは高さ約2.7m。床面積はそれぞれ約10m2と約6m2だ。セメント系建設3Dプリンターで、実際の小規模建築物を印刷したのは国内初。型枠を使わずに複雑な形状の構造物を素早く造形できた。2基のトイレのうち1基には曲面を用い、花のつぼみをイメージして表面に複雑な凹凸をつけた。同社は20年7月に北海道白老町に開業した「⺠族共生象徴空間(ウポポイ)」の屋外ベンチも3Dプリンターで印刷した。