スマートビルが進化し、その守備範囲が広がるにつれ、これまで別々に運用していた設備やシステムを統合管理するプラットフォーム、いわゆる「建物OS」を提供する企業が現れた。その争奪戦が激化しそうだ。
ソフトバンクの本社が入居した東京ポートシティ竹芝(東京都港区)のオフィスタワーは、東急不動産と鹿島が開発した地下2階・地上40階建ての最新スマートビルだ。利用者やテナント、ビル管理者に役立つ機能を、これでもかと盛り込んだ〔図1〕。
例えば6階オフィスロビーには、コロナ禍を意識したセキュリティーゲートを設けた。カメラ映像で入場者の顔を認識し、事前登録した従業員と一致すればゲートが開く。体温を検知して入場制限する機能も備える。
それだけではない。入場者が働くフロアを認識し、乗るべきエレベーターまで教えてくれる。入場から座席に着くまでを「顔パス」にしたことで、接触感染を減らせる。
館内に設置した合計1300個のカメラやセンサーの情報は、ビル管理の効率化に役立てる。例えば、過去にトラブルを起こした要注意人物を登録しておけば、館内のカメラ映像から即座に検知してアラートを鳴らしてくれる。人流データを細かく取れるので、混雑具合に応じて警備員の増員や配置を見直したり、イベントの来場者予測に活用したりもできる。
ロボットとエレベーターが連携
東京ポートシティ竹芝の例が示すように、従来は省エネ対策などが中心だったスマートビルが急速に進化している。守備範囲が広がるにつれて必要性が高まっているのが、これまで独立していた設備やシステム、センサーなどを統合管理するプラットフォーム(建物OS)だ。
清水建設は2020年10月12日、スマートビル向けの建物OSである「DX-Core」の開発を年内に終え、顧客への提案を始めると発表した。導入費は延べ面積1万m2規模の新築オフィスビルで1億~2億円程度。「建物管理システムを自社開発し、長年運用してきた経験を生かせる」(同社システムイノベーション部AI・IoTグループの本田力也主任)
空調や照明、カメラ、入退室管理機器、エレベーター、自動ドア、ロボット、デジタルサイネージといった設備やサービスアプリなどを、システムの開発者を問わずに連携できる。ロボットとエレベーターや自動扉を連携させれば、ロボットによる警備や館内物流なども実現しやすくなる。
大手建設会社は近年、設計や施工だけでなく、建物の維持管理や運用も含めて幅広く収益を上げる戦略にシフトしている。建物OSは、その強力な武器になりそうだ。