2021年以降、スマートシティーを巡る動きが加速する。各地でモデル事業が本格化し、内閣府の「スーパーシティ構想」も始動する〔図1〕。様々な業種の企業がしのぎを削る新たな舞台で、建設会社などはどう戦うか。
「子育て世代や高齢者といった課題を抱えた人と発明家が一緒に住む」。トヨタ自動車の豊田章男社長は2020年11月の決算発表会で、21年2月23日に着工予定の「Woven City(ウーブンシティ)」についてこう語った〔写真1〕。
トヨタが20年1月に構想を明らかにしたウーブンシティは、静岡県裾野市の工場跡地につくる約70万8000m2のスマートシティー。クルマや人、住宅などがネットでつながる街を実証の舞台とし、社会課題の解決に向けた発明を素早く世に送り出す。パートナーを募るトヨタのもとには、既に個人や法人から約3000もの応募があったという。
トヨタのような自動車メーカーから電機メーカー、IT企業、通信会社、鉄道事業者に至るまで、世界中の多様なプレーヤーがスマートシティー事業への参入を目指している。スマートシティーに明確な定義はないが、おおむね次のようなイメージだ。
カメラやセンサーを通じて人やモビリティーの移動、設備の稼働状況などのデータを「都市OS」と呼ぶIoTプラットフォーム(データ基盤)に吸い上げ、AI(人工知能)で分析する。分析結果を基にビルなどの運営を最適化。住民に交通サービスを提供したり、インフラの維持管理を効率化して行政コストを削減したりする〔図2〕。
スマートシティーはまさに、都市のDX(デジタルトランスフォーメーション)と言える。
有名な事例に、中国のEC(電子商取引)大手、アリババ集団による浙江省杭州市での渋滞対策がある。4000台超のカメラ映像をAIで解析し、交通状況に応じて信号機を制御することで、救急車の到着時間が半減したほか、一部地域で自動車の走行速度が15%も向上したという。
スマートシティーの実装を後押しする政策は年々充実している。国土交通省は、自治体と民間事業者の連携によるスマートシティーの調査費用などを支援するモデル事業を展開中。20年7月までに、事業の成熟度が高く先駆的な「先行モデルプロジェクト」に合計22事業を選んだ。
内閣府は、自動運転や決済の完全キャッシュレス化などを実現した未来都市をつくる「スーパーシティ構想」を掲げる。国家戦略特区制度を活用し、規制緩和や税制優遇を行う。20年12月に区域指定を目指す自治体の公募を始めた。