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工場や物流施設、オフィス、ミュージアム、ホテル、イベントホールなど、意外な用途の取り合わせで街を築いた「ところざわサクラタウン」が埼玉県所沢市にオープンした。建築主は、出版や映像、アニメなどの事業を手掛けるKADOKAWAと角川文化振興財団。隈研吾氏がデザイン監修、鹿島が全体の設計・施工を担当した。出版事業や働き方の改革を推進する一方、人気コンテンツで世界から人を呼び込む拠点となる。地元の所沢市は周辺整備を進めるなど、文化を切り口にした新たなまちづくりの形を示している。

2階レベルにある中央広場を取り囲むように、6階建ての「本棟」(写真左から中央)と「角川武蔵野ミュージアム」が立つ。右手に見えるミュージアムの外壁は、約2万枚の石を張っている(写真:安川 千秋)
2階レベルにある中央広場を取り囲むように、6階建ての「本棟」(写真左から中央)と「角川武蔵野ミュージアム」が立つ。右手に見えるミュージアムの外壁は、約2万枚の石を張っている(写真:安川 千秋)
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 埼玉県所沢市の「ところざわサクラタウン」が2020年11月6日、グランドオープンを迎えた。JR武蔵野線・東所沢駅を降りて10分ほど歩くと、武蔵野の風情を残す公園の雑木林を透かして、不思議な形をした巨大な建物が見えてくる。外壁全体を石で覆い尽くした高さ31mの「角川武蔵野ミュージアム」だ。ミュージアムが立つ広場の先には、手すりにエキスパンドメタルを用いたテラスが巡る6階建ての本棟が立つ。

 ところざわサクラタウンは、意外ともいえる用途をいくつも組み合わせた複合施設だ。書籍の製造・物流施設やオフィス、イベントホール、物販・飲食店、ホテル、ミュージアム、神社などが混在して、延べ面積約8万7000m2の建物を構成している〔図1〕。建築基準法上の分類で11用途が複合する。「いろいろな機能が混在していて、新しい街の在り方として興味深いプロジェクトだった」。デザイン監修の立場でプロジェクトに参画した隈研吾氏はそう振り返る。

〔図1〕工場もホテルもある複合施設
〔図1〕工場もホテルもある複合施設
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