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谷尻誠氏と吉田愛氏が共同主宰するSUPPOSE DESIGN OFFICE(サポーズデザインオフィス)が設立20周年を迎えた。これまで、建築と自然の間(ま)、行為と空間の間など、中間領域に着目し、斬新なプランを生んできた。常識を疑う独立時からの姿勢は、2020年完成の自邸でも健在だ。

HOUSE T(東京都渋谷区)
建て主に自らの住まい方を伝える

「家はどうする?」。妻の言葉をきっかけに自邸の建設を考え始めた谷尻誠氏。都内に実現するため、賃貸併用に発想を転換。併せて、通常の住宅設計では発注者に理解してもらえない自身の住宅観を示す場とした。

 谷尻誠氏の自邸「HOUSE T」は、都心の騒がしさから少し離れた静かな住宅地に立つ。緩やかに北に向けて傾斜する周辺エリアには、戸建て住宅や集合住宅が立ち並ぶ。その一角にあるHOUSE Tは、地下1階、地上2階建ての鉄筋コンクリート造。北側道路に面した斜面地を掘り込んで地下1階をつくり、その上に、フロアごとにセットバックさせた地上1階と2階が重なっている〔写真1図1〕。

〔写真1〕コンクリート壁で居住空間を覆う
〔写真1〕コンクリート壁で居住空間を覆う
北側の前面道路から見た全景。斜面地を掘り込んでつくった地下1階を駐車場と賃貸スペースに充てている。1階部分の居住スペースはコンクリートの壁で覆っている(写真:矢野 紀行)
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〔図1〕北向きの斜面地を解く
〔図1〕北向きの斜面地を解く
谷尻氏によるHOUSE Tの断面スケッチ。北側の道路に対して、1、2階はセットバックする形で構成。2階からは都心の高層ビル群などが望めるように高さを決めている(資料:SUPPOSE DESIGN OFFICE)
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 HOUSE Tには、谷尻氏らしい2つの切り口を見ることができる。1つは、住宅という資産の所有に対する発想、もう1つは、谷尻氏が考える住宅の在り方だ。