雨漏りが発生したのは、金属屋根でふいた片流れ屋根の軒ゼロ住宅。引き渡しから2年でトラブルに見舞われた。棟部に取り付けた唐草水切りの継ぎ目に生じたわずかな隙間から雨水が浸入した。(日経アーキテクチュア)
金属屋根材を採用した片流れ屋根の住宅では、棟からの浸水による雨漏り事故が後を絶たない。そのリスクは私自身様々な場面で指摘してきたが、トラブルは一向に減らない。今回紹介するのもその1例だ。
雨漏りが発生したのは築2年の戸建て住宅で、溶融アルミ亜鉛メッキ鋼板を用いた片流れ屋根を採用していた。軒の出の小さい典型的な軒ゼロ住宅で、屋根は縦ハゼぶきで納めていた。
住まい手の話によると、夏季の台風襲来時に、2階の天井から落ちた雨水が柱を伝わって床に広がったという。住宅を建てた工務店が外観を点検したところ、特に異常はなく、「雨漏りではなく結露ではないか」と伝えたそうだ。
納得できない住まい手は、工務店に2階天井の解体を指示した。この住宅は屋根断熱を採用しており、垂木間に硬質発泡系断熱材を充填。断熱材と野地板の間に通気スペーサーを入れて通気を確保していた。解体調査の結果、通気スペーサーに棟側から浸入したとみられる雨染みが残っていた〔写真1〕。
雨漏りに間違いないと判断した住まい手は、第三者の立場から原因を調査するよう筆者に依頼してきた。現場を見た筆者は、雨漏りの発生場所が片流れ屋根の棟側に近い部屋だったことから、棟付近から雨水が浸入した可能性が高いとみた。