道路に面する妻側の外壁を立ち上げ、陸屋根のように見える住宅。この立ち上がり壁のパラペットと片流れの金属屋根の取り合い部で雨漏りが生じた。浸入口は金属屋根の軒先コーナー部だった。(日経アーキテクチュア)
築十数年の木造2階建ての戸建て住宅を中古で購入した住まい手からの相談を受けた事例だ。2年足らずで小屋裏の木材が腐朽していることが発覚した。
住まい手は売買時にインスペクションを実施した検査会社に相談したが、「結露ではないか」と言われ補修が進まない。そこで「原因を調査してほしい」と当社に依頼してきた。
道路から見ると陸屋根と思える住宅だ。小屋裏を点検すると、パラペットのコーナー部に位置する柱と野地板が真っ黒に染みていた。局部的に水の流れた痕が発生していたので、雨漏りだと判断した。このような黒染みは、頻繁に雨漏りしているときに見られる症状である。
屋根に上がると、道路側だけ立ち上がり壁となっていた。その屋根は3方をパラペットで囲み、緩勾配の立て平ぶき金属屋根を採用していた。雨漏りしていたのは、その片流れ屋根の軒先コーナー部だった〔写真1〕。
外観の目視調査では、室内に著しい木部の腐朽が起こっているにもかかわらず、外壁には大きな隙間は発見できなかった。
次に散水調査を行った。パラペットと金属屋根の取り合い部へ、方向を変えながら散水し、漏水の有無を観察した。屋根の軒先側から散水したとき、小屋裏への漏水を確認した〔写真2〕。漏水箇所を小屋裏側から詳細に調べると、野地板の奥側に、立て平ぶき屋根の唐草水切りの裏面が見えた〔写真3〕。通常、野地板があるので小屋裏側からは見えないはずだが、野地板が腐朽して穴が開いているため見えていたのだ。ここから柱までの腐朽がひどく、雨漏りの浸入部となっていることが分かった〔写真4〕。