既存屋根材の上に新たな屋根材をかぶせるカバー工法は、一般に雨漏りリスクが少ないと理解されている。だが、改修後時間がたつと雨漏りリスクが高まる例もある。カバー工法の屋根をふき替えた事例を紹介する。(日経アーキテクチュア)
「外壁塗装に合わせて屋根も塗装しようとしたら、表面が劣化しているのが分かった。塗装できる屋根材なのか診断してほしい」と塗装工事会社から相談があった。現地を訪れると、築30年の建物の外壁を塗装中で、足場が設置されていた〔写真1〕。
屋根材はセメント波板で、表面の一部に剥離が見られた。「屋根材の劣化が進み過ぎており、塗装中に屋根材が踏み割れてしまう状態だ」と伝えた。その結果、塗装工事会社は所有者にふき替え工事を提案した。
セメント波板はすでに廃盤となっており、ふき替え用か、カバー工法用かが分からない。軒先部を調べたところ、セメント波板の下に石綿スレートが確認でき、カバー工法で改修された屋根と判明した〔写真2〕。
カバー工法の屋根の上にさらに屋根材を重ねるのは難しい。下地の劣化状況や、屋根が重くなることが構造的に問題ないかが確認できないからだ。結局、セメント波板と石綿スレートの2層の屋根材を撤去して、新たに金属屋根材でふき替える工事をすることとなった。