オフィスの見直しが広がる中、「人が集まること」を強調したプロジェクトも目立つ。オフィス建築で数々の受賞歴を持つ小堀哲夫氏は、「コロナ禍で働く意味や、オフィスが持つ“場の意味”を改めて考えざるを得ない」と語る。
日本のオフィスでは数年前からABW(アクティビティー・ベースド・ワーキング)の導入が進んでいた。コロナ禍はその流れを加速させた。
「今後のオフィスはABWから進化して、PBW(プロジェクト・ベースド・ワーキング)の考え方にシフトしていくのではないか。作業単位でなく、プロジェクト単位で人や資料を集中させて、効率的に成果を出すイメージだ。皆で集まるための“場の意味”が求められるようになる」。そう語るのは、小堀哲夫建築設計事務所(東京都文京区)の小堀哲夫代表だ。
同事務所ではその考えを体現するようなプロジェクトを、立て続けに2つ手掛けている。1つは2020年10月、虎ノ門ヒルズビジネスタワー(東京都港区)に開業したシェアオフィス「CIC Tokyo」だ。2フロアで160室を超える大小のオフィスやコワーキングスペース、カフェなどを配置した。
運営するCICは1999年に米マサチューセッツ州で創業した。多数のスタートアップ企業を1カ所に集めて、ノウハウを学び合える環境の提供を売りとしている。
CIC Tokyoでは、自然界に多く見られるボロノイ図(平面上の任意の点を基に、それぞれ一番近い部分を囲い込み、領域分けした図)のパターンを使い、不整形の個室を細胞のように配置した。迷路のように入り組む通路の幅広なスペースは、利用者が出会えるたまり場とした。