住宅で数十年暮らし続けることを考えると、コロナ禍は一過性の出来事かもしれない。だが、変化の兆しはある。テレワークや自宅学習を想定して家族個人のスペースを確保する他、外部環境を採り入れる住宅が出てきた。
2020年初めに計画が始まった「生態系と共に生きる家」は、5人家族が同居しつつ、快適な距離感を保てるプランが求められた例だ。設計はMARU。architecture(マル・アーキテクチャ)(東京都台東区)が担当している。
建て主は、トカゲやハムスター、カメ、犬、熱帯魚と様々なペットを飼う動物好きの一家。ペットを飼育ケージに入れず、分け隔てなく暮らせる家が理想だった。
熱帯由来のトカゲの生育環境を日本の住宅内につくるのは、温熱環境の面で矛盾することも多い。さらに、子どもが成長して家族の暮らし方が変化していくことも考慮しなければならない。「多様な環境をどう建築で解くかが課題だった。人や動物の過ごし方がそれぞれ違っても、空間が連続していれば互いの存在を感じ、居心地の良さが生まれる。そのため、個室を閉じないことにこだわった」と、マル・アーキテクチャを共同主宰する高野洋平氏は説明する。
プランでは、井の字をずらしたような形に4枚の壁を立て、室内を複数のスペースに仕切る。大小の空間をつくり、食事や憩い、仕事、勉強、趣味など家族それぞれのアクティビティーに合わせて使い分けやすくする。2階もライフステージに合わせて主寝室や子ども室を変更可能なつくりとする。個室の間にある通路兼室内テラスはカウンターを設け、仕事スペースとしても使えるようにする。
家の中心となるのが、吹き抜けの室内庭だ。水槽や植栽を置いてトカゲやカメなどを飼育する。室内庭に階段を設けて、2階に上がるのに必ず庭を通る仕掛けがユニークだ。