公共空間を市民にとって使いやすい「居場所」とし、街や地域の価値を向上させる。その積極的な活用の機運が高まる中で、公共建築と公園の一体的な整備と運用に、従来以上に踏み込むプロジェクトが現れている。
大阪府茨木市の中心部で進む市民会館跡地エリア整備プロジェクトでは、縦積みの「立体的な公園」に相当する空間が建物内に生み出される。2023年の竣工を予定する。
19年実施のプロポーザルで茨木市は、前面に芝生広場を設け、これを施設機能と連携させる提案を求めた。伊東豊雄建築設計事務所と竹中工務店のJVが、街や公園の延長となる「縦の道」で全館に一体性を持たせる計画を示して選定された。
市役所に面する敷地に多目的ホールの他、図書館、子育て支援施設などの市民サービス機能を集約。図書コーナーを吹き抜けの動線周り各階に配置し、全体の融合度を高める。
「せんだいメディアテークをはじめ、機能を限定した部屋を設けずに大きな空間内に場所性を持たせながら統合する計画を試みてきた。今回、公園に近い空間の具現化を最初に明確に打ち出した。自由に選んで使える場所が、いまの公共建築には必要だと考えた」と伊東豊雄建築設計事務所の東建男取締役は語る。
市民との対話を通じて広場の必要性を把握した市は、18年に社会実験「IBALAB(イバラボ)」に着手。敷地に隣接する空地や中心市街地を舞台に「育てる広場」をコンセプトとする市民参加活動を促してきた。その流れを受け継ぎ、建物の設計側が主導するワークショップも重ねている。
「将来の利用者が使い方を発見し、ルールを考えながら並走する。10年前では考えられなかった公共空間の可能性が開けている」と茨木市企画財政部市民会館跡地活用推進課の向田明弘課長は語る。