建て主から欠陥にまつわる相談を受ける住宅検査会社のカノム。新連載では、同社の検査事例を基に欠陥防止の勘所を解説する。第1回は、構造用合板のくぎが“めり込み過ぎ”として建て替えることになった事例だ。
施工後に隠れてしまえば施工ミスはばれないもの──。こんな考え方をしていては危ない。意外なことから欠陥は見つかるものだ。
上の写真の事例は、そんな現場の1つ。築3年目のツーバイフォー構法の住宅でくぎの施工ミスが見つかった。写真の箇所では、厚さ9mmの構造用合板を留め付けていたくぎが約6mmめり込んでいた。
くぎの施工ミスが見つかったきっかけは、外壁のモルタルに生じたひび割れだった。壁一面にひびが現れたほか、変色も発生。雨漏りを疑った建て主は、住宅の施工者に依頼して原因を探ることにした。
外壁のモルタルの一部を撤去し、さらに透湿防水シートを剥がして状況を確認していたところ、作業に立ち合っていた建て主のA氏は「構造用合板を留め付けているくぎが深くめり込んでいる…」と気が付いた。
くぎのめり込みが気になったA氏。さらに周辺を調べてみると、めり込んでいる箇所は複数あった〔写真1〕。それぞれのめり込みの深さを測ってみると、平均して約4mmめり込んでいることが分かった。
不安になったA氏は、構造用合板に留め付けるくぎのめり込みについて、インターネットで検索した。すると、めり込み過ぎたくぎは施工不良であるという情報に行き当たった。ますます不安に陥ったA氏。施工者に雨漏りの修理を依頼するとともに、施工不良を指摘して対応を求めた。
現場を担当した瑕疵保険会社は欠陥を認め、施工者に建て替えを促した。しかし、施工者は首を縦に振らなかった。その後、地元弁護士会の住宅紛争審査会による調停を経て、最終的に建て替えで決着が付いた。
高めの空気圧設定は危険
このようなくぎのめり込み過ぎが生じている現場は少なくない。前出の事例で示したように、引き渡し後に見つかれば、施工者の自己負担で建て替えを迫られることもあり得る。「これくらい大丈夫だろう」「壁を張ったら見えなくなるから問題ない」といった甘い考えが、大きな痛手となって返ってくるので、十分に気を付けたい部分だ。
では、どうしてくぎのめり込みが生じるのだろうか。主な原因として考えられるのが、空気圧を使ってくぎを打ち込む電動工具の使用だ。今では建築現場で一般的に使われている機器だが、その便利さ故に気の緩みが生じやすい。
くぎ打ち機でくぎを施工する場合、打ち込みの力が弱過ぎると、くぎ頭が合板の表面から飛び出た状態になってしまう。この場合、再度、金づちでたたいてくぎを平らに打ち込む必要がある。大工はこの手間を嫌がって、くぎ打ち機の空気圧を高めて施工しがちだ。くぎがめり込んでしまったとしても「このくらいは問題ないだろう」と勝手に判断してしまう。これが、大抵の現場で起こっている事象だろう。
「空気圧の調整がうまくできない」というのであれば、最初から空気圧を弱めに設定しくぎ頭を浮かせて施工する。そして、改めて金づちでくぎ頭をたたいて施工するという2工程を考えておくことも必要だ。