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梁は構造耐力を担う大切な部位だ。不用意に穴を開けたり、切り欠いたりすることは避けねばならない。梁の穴を目の当たりにすれば建て主は不安を抱く。欠損を伴うなら、安全の確認が必須だ。(日経アーキテクチュア)

2階の床下にある梁に、排水管と給水管がそれぞれ梁を貫いて設置されていた。梁の中央部ではないものの、構造材に当たるので安全性に配慮して補強した(写真:カノム)
2階の床下にある梁に、排水管と給水管がそれぞれ梁を貫いて設置されていた。梁の中央部ではないものの、構造材に当たるので安全性に配慮して補強した(写真:カノム)
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 新築工事の検査業務の契約を交わした建て主のA氏からメールが届いた。そこには不安の声がつづられていた。内容は次の通りだ。「工事がだいぶ進んだので現場を確認しに行った。その際に、2階の床梁に穴が開けられていて、配管が貫通しているのを発見した。この穴は問題ないだろうか」

 梁を貫通しているといっても、穴の大きさや位置によって判断は異なる。現場を確認する必要があるため、後日、検査の際に改めて状況を聞くことにした。

 検査の当日、まずは、A氏が指摘した場所の状況の把握から始めた。1階の天井裏をのぞくと、梁に穴を開けて排水管を通した状態が目に飛び込んできた。そのすぐ横には給水管も通っていた。

 安全側で考えれば、「梁の欠損が大きく、構造に影響が出かねない」と判断するのが妥当だった。そこで、状況を現場監督に伝えて、補強工事を指示。現場監督からは「補強します」とその場で回答を得た。

 だがその後、状況が一変した。施工会社の設計担当者から、「現状に問題はないので補強工事はしない」と連絡が入ったからだ。

 建て主のA氏は困惑した。そして、問題がないと判断した根拠の説明を設計者に求めた。すると、「梁に穴を開けることについては、どの位置にどのくらいの大きさの穴を開けてはいけないといった基準がない。そうであれば、穴を開けても問題はない」といった趣旨の回答が戻ってきたのだ。

 この答えに納得できないA氏。対応を渋る設計者に怒りをあらわにして、こう言い放った。「巨大地震などの際に構造に問題が生じた場合は、施工会社だけでなく、設計者であり、穴開けの判断を下した建築士個人に対しても責任を求める」

 結局、設計者は当初の言い分を撤回。補強する案を受け入れた。後日、構造への影響を考慮して、梁の下に補強梁を追加した。

 前出の設計者が指摘した通り、木造軸組み工法の場合、梁の欠損に関する基準は定められていない。だからといって、無秩序に梁に穴を開けたり、切り欠いたりしていてはプロ失格ではないか。

施行令で欠き込みに言及

 条件に応じて程度は異なるものの、梁に穴を開けたり、切り欠いたりすれば、初期の強度を下回ってしまう。なかでも、一番力がかかる中央部の下側は影響が大きい。

 建築基準法施行令44条では、「梁、桁その他の横架材には、その中央部付近の下側に耐力上支障のある欠き込みをしてはならない」と、定められている。特に注意が必要だ。

 中央部付近の下側でなくても、耐力上の欠点が認められれば、裁判などで責任を問われる恐れがある。その根拠として考えられるのが、同施行令41条だ。「構造耐力上主要な部分に使用する木材の品質は、節、腐れ、繊維の傾斜、丸身などによる耐力上の欠点がないものでなければならない」とある。これをしっかりと頭に入れておき、なるべく梁に穴を開けない設計を心掛けたい。