2021年、建築実務のルールが大きく変わる。キーワードはデジタル、脱炭素、防災だ。「押印廃止」をはじめとしたデジタル化の加速、脱炭素を巡る議論の活発化、自然災害に備えた防災対策の強化など、様々な背景を持った法制度が施行される。最新の情報を知らなければ、規制対応にばかり追われ、恩恵を得ることができない。建築実務に影響が大きい法改正をピックアップし、いち早く解説する。

建築実務が変わる! 法改正2021
デジタル、脱炭素、防災がキーワードに
目次
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IT重説解禁から始まる規制緩和 図書のデジタル保存も容易に
国のデジタル化推進方針を受け、国土交通省は規制緩和に舵(かじ)を切った。まず建築士法に基づく重要事項説明として「IT重説」を正式解禁。法定書面のデジタル化容認、設計図書の押印廃止、デジタル保存解禁も予定する。
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押印廃止で加速する電子申請 ガイドラインも近く改訂
2021年1月1日、行政手続きの押印(認め印)廃止が一斉に施行された。確認申請でも押印不要となり、これに伴って国土交通省は2月にも電子申請に関する技術的助言を改訂する。建築士事務所側でも対応が急がれる。
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ドローンは「要登録」に移行 事故抑止に向け規制強化
完成物件の空撮や点検・調査など、建築界でも普及が進むドローンについて、国土交通省は近く規制を強化する。規制対象を拡大、かつ所有者に登録を義務付ける。一方、従来は不可能だった運用を条件付きで認める。
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省エネ適判対象拡大と説明義務 4月に完全施行、備えは万全か
2021年4月1日、改正建築物省エネ法が完全施行される。中規模非住宅も「省エネ適判」が必須となり、住宅を含む小規模建築物では建築主への説明が義務付けられる。省エネ計算は新築計画に欠かせない業務に加わる。
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省エネ説明はいつ実施すべきか? 設計・施工一括契約ではトラブルの恐れ
4月1日から始まる改正建築物省エネ法による小規模建築物での説明義務制度。住宅分野に詳しい秋野卓生弁護士は、住宅でよく用いられる設計・施工一括契約では説明タイミングが問題になると指摘する。(日経アーキテクチュア)
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「断熱等級5」を新設? 分譲・賃貸向けの表示ルールも
建築物省エネ法の完全施行を前に、表示制度の強化・新設が検討されている。住宅性能表示制度における誘導水準の「断熱等級5」の新設、不動産流通における分譲住宅や賃貸住宅での光熱費表示などが軸だ。
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民間にも対象広げる抜本改正案 木造化・木質化さらに加速へ
公共建築物等木材利用促進法に改正の動きが出ている。法の名称から「公共」を外し、対象を民間に広げて木造化・木質化の政策誘導を図るもので、議員立法による法案作成が進む。日経アーキテクチュアは改正法骨子案を入手した。
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分譲マンションを住棟認定に 低迷する制度の利用促進を図る
マンションでの長期優良住宅制度の利用が低迷している。テコ入れのため、国土交通省は法改正に乗り出す。住戸単位の認定を住棟単位でできるようにし、煩雑な手続きの軽減を図る。さらに認定基準の合理化も進める。
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既存住宅も紛争処理の対象に 瑕疵情報を収集するDB構築
国土交通省は、既存住宅の流通を活性化するため、紛争処理の体制整備に乗り出す。さらに、既存住宅で発生した瑕疵(かし)の事例を収集、分析して、予防策の研究に取り組む。2021年度からデータベース構築を始める。
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石綿建材の事前調査を報告制に 戸建てリフォームも対応を
石綿(アスベスト)含有建材の有無を確認する事前調査の重要性が増している。環境省と厚生労働省は、事前調査の報告制度を2022年4月から開始する。事前調査を実施する資格者の制度も23年10月にスタートする。
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校舎や体育館の段差100%解消 地域の防災力強化を図る
2021年4月施行の改正バリアフリー法では公立小中学校が適合対象に追加される。9割が災害時の避難所に指定されており、地域の防災力強化につなげる狙いだ。また、国土交通省は、建築設計標準の改定も進めている。
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居住エリアから災害ゾーン除外 河川の浸水区域は建築許可制に
2021年10月、居住誘導区域から災害レッドゾーンを除外する改正都市再生特別措置法が施行される。激甚化する自然災害に対応するため、国土交通省は災害リスクの高いエリアの開発規制を相次いで打ち出す。
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瓦の緊結を22年1月から義務化 19年房総半島台風を教訓に
国土交通省は、2022年1月1日から、新築建物のすべての瓦を緊結するよう求める。19年の台風15号による房総半島の被害などを踏まえた措置だ。この台風で被害が少なかった民間のガイドラインを告示に位置づけた。