青木淳氏が2020年7月、自身の設計事務所を「AS」へ改名し、パートナーに迎えたのが品川雅俊氏だ。08年入所の品川氏は14年、32歳でチーフに。現在、青木氏と対等の立場で、最初の大型プロジェクトをけん引する。

AS(東京都港区)の前身である青木淳建築計画事務所で、建築界の多くが知るところとなったのが“4年卒業制度”だ。スタッフは入所して最初のプロジェクトは補佐的に、次のプロジェクトは主担当として設計に臨む。トップダウンではなく、青木氏と担当者が互いに意見を交わしながら計画案を練り上げていく。
そうして約4年間で2件のプロジェクトを担当し、ひと通りの経験をしたら独立する。ただ、近年は1つの仕事が長期化する場合が多く、4年で収まることはなくなったが、基本的には長く在籍せずに、一人前になったら出て行く。組織の新陳代謝を図るというのが同事務所の方針だ。
品川雅俊氏は現在、入所12年目。同氏も「入った頃は4年から6年で独立するつもりだった」と言う。先輩たちと同じ道を歩むなら、「大宮前体育館」が竣工した2014年が事務所を辞めるタイミングだった〔写真1〕。
「大宮前体育館については、デザインの方向性など、自分なりに感じることがあったので、青木にいろいろと意見をぶつけてみた。彼と突っ込んで議論する機会を持ったのはそのときが多分、初めて」と品川氏。事務所を今後どうするかといった話もするようになり、青木氏から「残ってほしい」との申し出があって、品川氏は結局、残る決意をした。