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バブル入社組の大量定年を控え、大手設計事務所やゼネコンでは、シニアの活用が大きなテーマになっている。働き手からみれば、実力次第で60歳以降に希望の職や待遇をつかみ取れるチャンスが広がる。

 空前の好景気に沸いた1980年代後半。この時期に大量に入社した「バブル世代」が数年後には、60歳の定年を迎える。人手不足が顕著で、40代以下が手薄な建築界では、今後60代になる人材をどう生かすかが大きな課題となっている。

 そんななか、60代の待遇を手厚くする企業が現れ始めた。例えば、矢作建設工業は、2021年4月から定年を60歳から65歳に延長。処遇を改善し、以前と同じ役割を担う人には同等の報酬を用意する。背景には、技術者の人手不足やベテラン有資格者の他社への流出という事情がある。併せて、55歳以降に60代の働き方などについて相談する機会を設ける予定だ。

 高齢社員にとって働きやすい環境をつくることも大切だ。シニアが何をやっているか周囲に知ってもらうことで、職場で孤立せずに済む。PwCコンサルティング合同会社(東京都千代田区)で組織人事を専門とする坪井淳パートナーは、「60代の社員に仕事を任せるうえで、役割を明確にすることが欠かせない。逆に、シニアが役割をわきまえずに振る舞えば、周囲が不満に感じる恐れがある」と説明する。

 企業がシニアに求める役割は何か。人事制度に詳しいクレイア・コンサルティング(東京都港区)の和田実シニアマネジャーは、「専門能力などに加えて、技能を伝承したかも評価すべきだ」と指摘する。働き手としては60歳以降、後進育成にも重点を置いて働く必要がある。