2011年3月11日午後2時46分に発生し、巨大な津波を引き起こした東日本大震災。2万2000人超の死者・行方不明者を出した巨大地震は、建築・都市の常識を根底から覆した。あの日から丸10年──。建築の技術・制度はどのように進化を遂げたのか。次なる巨大災害に備え、東北の被災地で繰り広げられた復興事業から何を学ぶべきか。改めて検証する。

検証・東日本大震災10年
浮かび上がる課題、次なる巨大災害にどう備える
目次
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カメラが追った震災復興 津波被災地は様変わり
東日本大震災から丸10年を迎え、東北の被災地はよみがえったのか。37兆円超の関連予算を投じて進めた未曽有の復興事業は、どのような光景を生み出したのか。津波で大きな被害を受けた岩手・宮城県内の主な自治体の今を、カメラが切り取った。
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津波に天井、液状化、長周期…… 3.11後に建築技術は進化したか
鉄筋コンクリート造のビルが、津波で杭を引き抜かれて横転──。東日本大震災の直後、日経アーキテクチュア記者が訪れた宮城県女川町には、目を疑うような光景が広がっていた。
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170mのロッドで制振効果を増幅 新宿住友ビルが示した超高層の進化
東日本大震災であらわになった長周期地震動の威力。超高層ビルが立ち並ぶ東京・西新宿で、着々と対策が進んでいる。なかでも新宿住友ビルは2020年6月、前例のない制振システムの導入を完了した。
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浦安での対策実施は33戸どまり 合意と工費の壁を乗り越えるには?
東日本大震災の揺れで、大規模な液状化被害に見舞われた千葉県浦安市。対策実施の機運は盛り上がったが、住民合意などが「壁」となり、多くの地区で対策工事を実施できなかった。液状化対策の解決策を探る。
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それは天災か人災か、問われた建築実務者の責任
この10年間で、東日本大震災が引き起こした様々な建築紛争が裁判所に持ち込まれた。不可抗力による災難だったのか、損失を誰が負担すべきなのか──。問われたのは建築実務者の責任だ。日経アーキテクチュアが追った6つの事件を巡る訴訟から、教訓を読み解く。
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急ピッチで進んだ市街地再建 土地や建物を持て余す自治体も
東日本大震災の巨大津波による浸水面積は、JR山手線の内側の面積の約9倍に当たる561km²に及んだ。炉心溶融を起こした東京電力福島第1原子力発電所の廃炉を除けば、津波で壊滅的な打撃を受けた市街地の再建は、この10年間の最大のテーマであり続けたといえる。
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1戸に1億円超も投じた団地の苦境 「差し込み型」防災集団移転に学べ
宮城県石巻市が住宅再建に向けて実施した防災集団移転促進事業の総事業費は約880億円に上る。利便性の良い市街地に整備した団地がにぎわう一方、半島部の高台に点在する小規模団地は苦境に立たされている。
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困難極めた防潮堤と街づくりの両立 気仙沼・大谷海岸が砂浜を残せたワケ
東日本大震災の被災地に建設された巨大な防潮堤。街と海を分断する存在として批判されることが少なくない。防潮堤と街づくりは、両立し得ないのか。宮城県気仙沼市の大谷海岸の取り組みを追った。
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使い続けるか、撤去か 「みんなの家」その後
東日本大震災直後、多くの建築関係者が被災地を訪れ、自分に何ができるかを考えたことだろう。しかし、よかれと思って持ち込んだ提案の多くは実現しなかった。復興に際して、建築家の出番は決して多くなかった。
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足踏みする「事前復興」 完璧を目指さず第一歩を踏み出せ
東日本大震災で注目されたのが、将来の巨大災害に備えて、前もって計画をつくる「事前復興」の考え方だ。しかし、多くの自治体は検討に着手できていない。検討が進まない要因を検証しながら、今後の道筋を探る。