東日本大震災の揺れで、大規模な液状化被害に見舞われた千葉県浦安市。対策実施の機運は盛り上がったが、住民合意などが「壁」となり、多くの地区で対策工事を実施できなかった。液状化対策の解決策を探る。
千葉県浦安市は、東日本大震災の影響で埋め立て造成地の約1455ヘクタールで液状化現象が発生し、約8700棟の建物が沈下したり、傾いたりする被害を受けた〔写真1〕。
この事態を受けて、市は東日本大震災復興交付金制度を活用した市街地液状化対策事業に取り組んできた。2014年6月までに住民側から要望が出された16地区、4103戸を対象に、対策工事の実施に向けて動き出した。ところが、結果的に対策工事を実施して完工できたのは東野3丁目地区の33戸のみだった〔図1〕。
対策工事の実施を阻む大きな「壁」となったのが「住民合意」の取得だ。制度上は、宅地所有者の3分の2以上の同意を得れば工事を実施できるが、市は原則、全宅地の合意が必要だと判断した。
というのも、市が採用した格子状地盤改良工法はセメント系固定材を使って宅地の境界に沿って地盤を改良し、対象エリアに碁盤の目のような壁を形成して液状化を防ぐもので、全宅地で実施できなければ壁が途切れて効果が薄れてしまうからだ。