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東日本大震災の巨大津波による浸水面積は、JR山手線の内側の面積の約9倍に当たる561km2に及んだ。炉心溶融を起こした東京電力福島第1原子力発電所の廃炉を除けば、津波で壊滅的な打撃を受けた市街地の再建は、この10年間の最大のテーマであり続けたといえる。
復興庁によると、2011~19年度における復興関連予算の執行見込み額は約37.1兆円。このうち「住宅再建・復興まちづくり」は、最も多い約12.9兆円を占める〔図1〕。
〔図1〕2011年度から19年度の執行見込み額は約37.1兆円
復興庁が2020年7月に発表した、東日本大震災復興関連予算の執行状況。「住宅再建・復興まちづくり」の占める割合は最も大きい(資料:復興庁)
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浸水エリアから、山を切り開いて造成した高台の住宅団地に移転する、あるいは浸水した市街地をかさ上げして新たな市街地を築く──。
被災した自治体は天文学的な予算を背景に、防災集団移転促進事業や土地区画整理事業、津波復興拠点整備事業などのメニューを駆使して、市街地の再建や宅地の供給などを展開。「復興・創生期間」の最終年度である20年度末までに、多くの被災地で事業完了のめどがついた〔写真1、図2、3〕。
〔写真1〕防災集団移転でつくった真新しい街
宮城県石巻市の新蛇田地区(現在の町名は「のぞみ野」)。計画戸数は戸建て住宅730戸、災害公営住宅535戸で市内最大だ。商業施設や三陸自動車道のインターチェンジが近く、にぎわいを見せる(写真:村上 昭浩)
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〔図2〕浸水エリアの再建スキームと整備面積
岩手・宮城・福島の被災3県では防災集団移転促進事業で8375戸、土地区画整理事業で9357戸分の宅地を整備した。土地区画整理事業は防災集団移転の団地造成などでも活用しており、図中の面積にはこれらを含む(資料:国土交通省の資料を基に日経アーキテクチュアが作成、写真:村上 昭浩)
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〔図3〕宅地などの整備の最盛期は2014~17年度
岩手・宮城・福島の被災3県における応急仮設住宅の入居戸数と民間住宅等用宅地の供給数、災害公営住宅の供給数(原発避難の帰還者向けは除く)の推移。各年度末時点の数値を集計した(2020年度のみ21年1月末時点)(資料:復興庁や岩手県、宮城県、福島県などの資料を基に日経アーキテクチュアが作成)
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