まさに「ゲームチェンジ」──。2020年10月の首相演説を口火に、政府は2050年脱炭素社会に向けて大きく舵(かじ)を切った。炭素に価格をつける「カーボンプライシング」の検討が本格化し、住宅分野においては省エネ基準適合義務化の議論が再燃している。脱炭素化は世界的な潮流であり、加速こそすれど減退することはない。強まる環境規制を注視しつつ、沸騰するグリーン市場をつかもう。

脱炭素住宅
省エネ基準適合義務化の議論が再燃
目次
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住宅なくして脱炭素なし
小泉進次郎環境相が激白
2050年カーボンニュートラル宣言で、潮目が一気に変わった。政府は「脱炭素」に向けて政策メニューを総点検しており、住宅政策も大変革期に突入。義務化に向けて、国土交通省と環境省、経済産業省による3省での具体的な検討が始まった。小泉進次郎環境相は、踏み込んだ規制の在り方を日経アーキテクチュアに語った。
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「新築ZEH義務」でも目標未達か
2050年カーボンニュートラルの掛け声で、住宅政策の激変が始まった。目標達成に必要なのは、住宅全戸平均で40%のエネルギー削減。その衝撃度を解説する。急浮上した省エネ基準適合義務化は、まだ入り口。新築ZEH義務でも達成できない見込みだ。
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説明義務化に備えトラブル防ぐ
改正建築物省エネ法の目玉である省エネ性能の説明義務制度が2021年4月に開始される。設計事務所や住宅会社では体制の整備が急務。説明不足や評価ミスに起因するトラブルも予想される。義務化直前に、改めて制度の重要なポイントや、準備に必要なノウハウなどをおさらいしよう。
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次は集合住宅ZEHと再エネ活用
急転直下に思えるカーボンニュートラル宣言。だが、産業界の一部は“グリーンバブル”を予兆していた。コロナ禍にあえぐ世界経済の救世主として、海外では環境関連投資が2020年夏から活発化していたからだ。国内の大手住宅会社は集合住宅のZEH化や、再生可能エネルギー電力利用に積極的に乗り出している。
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「義務化」広がる世界の環境規制
米カリフォルニア州が新築住宅の太陽光発電(PV)設置を義務化して1年がたつ。同州は、早くも次の目標である「オール電化」導入に向けて動き始めている。住宅関連の規制強化で「脱炭素社会」の構築を急ぐ世界の動きは、日本の建築界にも参考となる。
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戸建てからプレハブまで 細部にこだわりエコ実現
2019年10月、王立英国建築家協会(RIBA)がその年最も優れた建築に贈るスターリング賞の発表に、英国の建築業界は大いに沸き立った。受賞したのは、英ノリッジの公営住宅事業「ゴールドスミス・ストリート」。同賞の歴史上初めて、公共の住宅事業が選ばれたのだ。
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盛り上がる低炭素技術開発
脱炭素達成のカギを握るのが技術だ。コンクリートや断熱材といった素材の他に、AI(人工知能)制御の活用も急がれる。世界に取り残されないためには、競合同士でも連携し、業界を挙げて一気に開発スピードを早めていく必要がある。
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「脱炭素住宅」実現への道筋
政府や企業がカーボンニュートラルに向かってアクセルを踏む状況に、省エネの専門家は何を思うのか。2021年4月に省エネ性能の説明義務化が始まることもあり、省エネ基準適合義務化には賛否両論ある。コロナ禍の影響も踏まえつつ、住宅業界の現況整理や課題の棚卸しが急がれる。