2050年カーボンニュートラルの掛け声で、住宅政策の激変が始まった。目標達成に必要なのは、住宅全戸平均で40%のエネルギー削減。その衝撃度を解説する。急浮上した省エネ基準適合義務化は、まだ入り口。新築ZEH義務でも達成できない見込みだ。
「今になって『省エネ基準適合義務化どうしましょう』と言っている役所に、カーボンニュートラル(温暖化ガス排出量実質ゼロ)に向けてリーダーシップが取れるとは思えない」
2月24日に内閣府が開催した「再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース」の終盤、河野太郎・行政改革担当相は国土交通省に対しこう啖呵(たんか)を切った〔写真1〕。
国交省は建築物省エネ法における省エネルギー基準適合に関し、「拙速な義務化は市場を混乱させる」として、慎重な判断が必要と主張。それに対して河野行革担当相は「規制が国交省にできないなら環境省にやってもらう」とまくし立てた。加えて、国交省が検討中の住生活基本計画も内閣府、環境省と再調整するよう指示。国交省に反論の時間はなく、この言葉を持って散会となった。
国交省が適合義務化を検討
住宅の省エネ規制がにわかに動き出した。適合義務化や、さらにその先の規制に向けた議論が始まった。
発端は2020年10月26日、菅義偉首相が所信表明演説で、50年までにカーボンニュートラルの実現を目指すと宣言したこと。これを機に大号令がかかった。再エネタスクフォースもその一環だ。環境省や経済産業省に脱炭素化の取り組みを指示し、各省は検討会を設けるなどの対応に迫られている。
住宅も逃れられない。赤羽一嘉国交相は21年3月10日の衆院国土交通委員会で、「適合義務付けを含めた対策の強化について、ロードマップを新たに作成する」と明言した。
国交省は19年の建築物省エネ法の改正に当たって、小規模住宅に関する適合義務を見送り、説明義務にとどめた経緯がある。以来、「説明義務化で適合率がどの程度変化するかを見極めてから、その先を議論すべきだ」(同省幹部)として、適合義務化についての議論を避けてきた。それが一転、検討を開始した。
国交省は21年4月にもロードマップに関する検討会を立ち上げる方針だ。有識者による委員会形式で、規制の具体的な検討を進める。25年度に適合義務化との一部報道には「決まっているものは何もない。時期も検討する」(同省建築環境企画室の上野翔平課長補佐)としている。