英国ノリッジ
パッシブハウスの公営住宅
2019年10月、王立英国建築家協会(RIBA)がその年最も優れた建築に贈るスターリング賞の発表に、英国の建築業界は大いに沸き立った。受賞したのは、英ノリッジの公営住宅事業「ゴールドスミス・ストリート」〔写真1〕。同賞の歴史上初めて、公共の住宅事業が選ばれたのだ。
公営住宅は、低所得者層向けの高密住宅地を設ける市直轄の再開発事業として、18年に竣工した。約8000m2の敷地に、戸建て45戸と集合住宅60戸を建設。東西方向に住居が並ぶブロックを7つ平行に配置し、生活道路や緑地を整備した。
注目は各住戸のエネルギー効率の高さだ。いずれもドイツ・パッシブハウス研究所が規定する性能基準を満たす証「パッシブハウス認定」を獲得している。建物の外壁は600mm以上と分厚く、内部にセルロースファイバーを隙間なく充填してある。壁の熱貫流率U値は0.11W/m2Kと、極めて高い断熱性能を実現した。
南北に非対称な屋根は北側を長くして、緩やかな15度の勾配をつけている。14m離れた南後方の住宅に屋根の影が落ちず、より長い時間日光が当たるようにした〔図1〕。
19年スターリング賞のジュリア・バーフィールド審査員長は、完成した住宅地を「つつましい傑作」と評した。「環境問題と社会問題の両面について、最も素直な形で配慮した高品質な建築。魅力的かつ広々とした省エネルギー住宅は今後、あらゆる公営住宅整備が規範とすべきだ」(バーフィールド氏)