意匠権はデザインを守る盾か、ビジネスに生かす矛か──。建築物・内装の意匠登録が可能になって1年。大手企業が競うように出願し、登録数は累計100件超に上る。一方、取材では意匠権を巡るリスクも明らかになってきた。建築デザインの自由な創作を妨げるとの懸念も少なくない。企業の最新動向や、意匠権問題に詳しい弁理士・弁護士の解説を交えながら、建築実務者が知っておくべき意匠権の最新動向を伝える。

意匠権ウォーズ
改正意匠法施行から1年、デザインを武器にせよ
目次
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「デザインを盗むな!」 意匠権巡る争いは新次元に
安易な模倣は創作者からデザインやアイデアを盗む行為だ。権利対象に建築物と内装を加えた改正意匠法により、建築デザインと権利を巡る状況は一変した。完成物件の意匠権侵害を認めた初の判決も出た。
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新制度による登録は100件超 最多は積水ハウス
改正意匠法施行日の2020年4月1日から21年3月15日までの約1年間で、建築物・内装の意匠登録は107件に上ることが日経アーキテクチュア集計で判明した。建築物の登録件数は内装の4倍に達し、うち約80%は住宅だった。
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ユニクロ、くら寿司、蔦屋書店 意匠登録1番手企業の思惑とは
改正意匠法の施行1年目、登録数で住宅会社が先行した一方、商業施設を展開する事業会社でも権利取得が進んだのは見逃せない。改正意匠法について、権利を取得した各社の狙いを聞いた。
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「曖昧では成り立たない」 僕が“第1号”を獲得できたワケ
ユニクロとくら寿司でクリエイティブディレクションを手掛ける佐藤可士和氏。独創的なコンセプトで、空間の資産価値を高めることにこだわってきた。その姿勢が、建築物・内装の意匠登録第1号の創作につながったと語る。
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大林組は「全創作物を出願」 権利で設計の自由を守る
取材では大手建設会社、組織設計事務所にアプローチし、改正意匠法への対応方針を聞いた。他社に先駆けて積極的に取り組んでいるのが大林組だ。「手掛けた創作物の全件出願」を目標に掲げる。
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病院の間取りで意匠権取得 非住宅でも出願ラッシュ
設計事務所としていち早く意匠登録したのは三菱地所設計だった。日経アーキテクチュアが大手企業を中心に改正意匠法への対応を取材したところ、非住宅部門で「現在出願中」との回答が複数企業から返ってきた。各社の狙いは。
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「出願は早い者勝ち」 意匠登録出願の要件とは
同じようなデザインが相次ぎ出願されたなら、権利者は早い者勝ち(先願)で決まる──。意匠登録制度にはそんな争奪戦の側面がある。いったん権利が確定すれば、権利者は侵害行為の差し止め請求や損害賠償請求を行える。
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弁理士・弁護士が答える 建築と意匠権3つの疑問
建築物・内装の意匠権は、建築設計の実務上、どのような存在となるのか。3つの疑問点をTMI総合法律事務所に所属する弁理士・弁護士に聞いた。