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安易な模倣は創作者からデザインやアイデアを盗む行為だ。権利対象に建築物と内装を加えた改正意匠法により、建築デザインと権利を巡る状況は一変した。完成物件の意匠権侵害を認めた初の判決も出た。

 箱状の戸建て住宅の前面で、ベランダの梁が柱と交差して十字を描く。住宅フランチャイズ(FC)グループを全国に展開するアールシーコア(東京都渋谷区)が、組み立て家屋の部分意匠として意匠登録したデザインだ。同社が「ワンダーデバイス」ブランドで販売する中で、最も販売数が多い企画型住宅「FRANK(フランク)」の特徴となる。

 2018年7月、商品とほぼ同一の外観を持つ住宅が鳥取市で分譲されているのが見つかり、建築訴訟に発展した〔写真1〕。

〔写真1〕建築訴訟で模倣が争われた

アールシーコアの「FRANK」(写真:アールシーコア)
アールシーコアの「FRANK」(写真:アールシーコア)
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鳥取市で完成した分譲住宅だ。柱が右寄りとなっただけで、ほぼ同一だ(写真:アールシーコア)
鳥取市で完成した分譲住宅だ。柱が右寄りとなっただけで、ほぼ同一だ(写真:アールシーコア)
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図は部分意匠登録の内容(実線部分が登録部分)(資料:アールシーコア)
図は部分意匠登録の内容(実線部分が登録部分)(資料:アールシーコア)
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 「これはデザインの盗用と思われますが、問題ないのですか。(ブランドに)思い入れがあるだけに気になってしまいます」

 アールシーコアが問題を認識したのは、ユーザーから同社の問い合わせ窓口へ届いたそんな1通のメールが発端だった〔写真2〕。

〔写真2〕ネット上での消費者被害を懸念
〔写真2〕ネット上での消費者被害を懸念
模倣の指摘はネット上で拡散した。写真のアールシーコアで知財を担当する勝間康裕氏は安易な模倣が建て主への思わぬ中傷につながることを懸念する(写真:日経アーキテクチュア)
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