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改正意匠法施行日の2020年4月1日から21年3月15日までの約1年間で、建築物・内装の意匠登録は107件に上ることが日経アーキテクチュア集計で判明した。建築物の登録件数は内装の4倍に達し、うち約80%は住宅だった。

 意匠登録した際、特許庁は登録内容や権利者などを意匠公報で公表し、同時に工業所有権情報・研修館が運営するデータベース「特許情報プラットフォーム」を更新する。日経アーキテクチュアは、2021年3月15日時点でデータベースを検索し、法改正で新たに出願が可能となった建築物・内装の登録を集計した(下の調査概要参照)。

 確認できたのは合計107件。建築物が86件、内装が21件だ。建築物のうち約60%に当たる52件が戸建て住宅とみられる。約20%に当たる16件がテナント併用の住宅(複合建築物)または集合住宅・マンションで、住宅分野で登録が先行していることが確認できた〔図1〕。内装は、店舗やオフィスの登録が目立つ。

〔図1〕住宅をはじめ建築物の意匠登録が進む
〔図1〕住宅をはじめ建築物の意匠登録が進む
建築物の用途は登録における「意匠に関する物品」の表記に基づく。うち「住宅」を戸建て住宅と見なした。中には賃貸併用住宅が含まれる可能性がある。各数値は、2021年3月15日時点の集計(資料:工業所有権情報・研修館の特許情報プラットフォームの公開情報を基に日経アーキテクチュアが作成)
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建築物・内装で450件超の出願

 企業別に見た登録数は、積水ハウスの28件が最多。大東建託、ミサワホームといった住宅会社が続く。戸建て住宅については、以前から物品の1種である「組み立て家屋」として住宅会社などの登録が進んでいた。改正法施行後、住宅会社などが新商品の意匠登録を「建築物」に切り替えていることが分かった。

 建築物のうち、非住宅の登録ではオフィスや店舗が多く、駅舎、病院などもあった。「ユニクロ」ブランドを展開するファーストリテイリングが店舗外観を登録したほか、設計事務所が取得したケースもあった。内装は主に事業者による権利取得が進んだ。

 特許庁によると、21年1月4日時点の出願件数は建築物が294件、内装が172件。登録が判明したのはうち2割ほどで、今後も登録件数は増加し続けるとみられる。

調査概要

工業所有権情報・研修館の特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)の公開情報を基に、建築物・内装として登録されている意匠を集計した。2021年3月15日時点で発行済みの内容を調査した。概要データの数字は、❶登録番号 ❷意匠に関する物品 ❸出願日 ❹登録日を表示。「建築物」は、日本意匠分類L0-0、L2~3台(L3-7を除く)の意匠登録を集計した。ただし、通常、主に物品を対象としていたり、意匠に関する物品の欄に「組立」を含んでいたりする内容を除いている。例えば、医療用のコンテナやトンネル構築用のコンクリート函体などだ。「内装」は日本意匠分類L3-7の意匠登録を集計した。同一意匠権者の登録において登録番号が3つ以上続き、❷~❹が同様の場合は、1つの項目にまとめている