設計事務所としていち早く意匠登録したのは三菱地所設計だった。日経アーキテクチュアが大手企業を中心に改正意匠法への対応を取材したところ、非住宅部門で「現在出願中」との回答が複数企業から返ってきた。各社の狙いは。
「三菱地所グループとして、病院は今後の再開発事業における重要な建築用途だと考えている。当社は病院の実績は少ないが、登録した意匠をブランドの1つにしたい」
こう語るのは三菱地所設計経営企画部長の清水明常務執行役員。同社は2020年11月、「病院」の意匠権を取得したと発表〔写真1〕。建築界の注目を集めた。
驚くべきは、病院の平面計画が意匠権の中核を成している点だ。登録した内容は、フロア外周部に共用廊下を設けた上で、2列に配した病室の間にスタッフステーションを置くもの。医療従事者の移動距離を短くする、その名も「ゼロ動線病棟」という。
鹿児島市に立つ病院「キラメキテラス ヘルスケアホスピタル」の設計に当たって生まれたデザインだ。清水常務執行役員の言は、この意匠権を自社のセールスポイントの1つとし、大規模都市開発には欠かせない病院新設プロジェクトの獲得を目指す、という意気込みだ。
三菱地所設計は、設計事務所として対外的にオリジナリティーをアピールする、という側面も評価する。意匠登録の内容が公表されることで設計者や建築主の氏名・名称が社会的に露出するからだ。特許庁が公表する意匠公報は、設計者にとっていわば「作品集」の役割を果たすとみている〔図1〕。

同社は今後、他の用途でも意匠登録出願を進める方針だ。21年4月から社内の情報共有体制を強化、設計チーム以外の目も動員して「知財の芽」を探していく。