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同じようなデザインが相次ぎ出願されたなら、権利者は早い者勝ち(先願)で決まる──。意匠登録制度にはそんな争奪戦の側面がある。いったん権利が確定すれば、権利者は侵害行為の差し止め請求や損害賠償請求を行える。

 意匠登録制度はもともと、事業目的で扱われる物品のデザイン保護を想定した制度だ。例えば家電メーカーが自社製品のデザインを登録、模倣商品が現れた場合に販売差し止めなどを請求するという形で使われてきた。2020年4月1日施行の改正意匠法により、登録対象に「不動産」である建築物・内装が加わった。

 出願対象は「視覚を通じて美感を起こさせるもの」(意匠法2条)、つまり見た目で分かるデザインだ。特許庁が公開している審査基準によると、審査ポイントは3つ〔図1〕。この審査を経て登録が可能になる。

〔図1〕特許庁は3要素で判断
〔図1〕特許庁は3要素で判断
特許庁の審査基準の概要。大きく分けて3つの要素から審査する。すでに公開されたデザイン、誰でも思い付くようなデザインは登録できない。特許庁は日ごろから雑誌やウェブサイトなどを収集して資料集めをしている(資料:特許庁)
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 住宅業界や知財に詳しい秋野卓生弁護士は、登録のハードルについて、「デザインの周知性(社会的に知られている度合い)や芸術性などとは関係なく、目で見て公知のデザインとの違いが分かるという水準」と説明する。特許などに比べればハードルは低いとみる。発売前の製品、発表前の設計を登録可能とし、デザインの権利を初期から保護する狙いがあるためだ。