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日本でも多くの建設会社が3Dプリンター技術の開発に取り組んでいるが、実用化にたどり着いた例はまだ少ない。建設分野の3Dプリンター研究の第一人者である石田哲也・東京大学大学院教授に課題を聞いた。

(写真:本人提供)
(写真:本人提供)

 3Dプリンターに関する研究開発は、世界各国で活発に行われている。アメリカコンクリート工学協会(ACI)の委員会では、立ち見が出るほど注目されている分野だ。日本でも日本コンクリート工学会(JCI)が研究委員会を立ち上げており、土木学会でも2021年度から委員会の設置が認められて私が委員長を務めることになった。国内での実用化に向けた議論を推し進めていきたい。

 3Dプリンターを活用することで得られるメリットは、デザイン性の向上や軽量化、省資源化など様々だ〔図1〕。従来工法では実現できない形を造形できるようになり、生産性の向上や省人化にもつながる。

〔図1〕メリットは省人化だけにとどまらない
〔図1〕メリットは省人化だけにとどまらない
3Dプリンターの活用で得られるメリット。省人化や省資源化だけにとどまらず、従来工法では実現が難しかったデザインを製作できることが大きな特徴だ(資料:取材を基に日経アーキテクチュアが作成)
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「遊び心」が技術を前進させる

 海外では3Dプリンターで住宅や橋を製作するなど、実用化が進んでいる。しかし、地震国の日本で建物の構造部材に使うには、力学的な性能をどうやって持たせるかという課題がある。この課題を解決できなければ、建築の構造部材への活用は難しく、しばらくは、型枠を3Dプリンターで製作して、中に高強度コンクリートを充填する「組み合わせ技」で使うことになるだろう。

 構造部材として使えるようにするには、品質や耐久性などを確認する試験方法のルールを定める必要がある。ルール化によって採用しやすくなり、普及を後押しするはずだ。

 課題はまだまだ多いが、失敗を恐れずにプロジェクトで試してみなければ議論は進まない。プロジェクトを進めるうえで重要なのが「遊び心」だ。「こんなものができたら面白いんじゃない?」という気持ちから始めたものが、新たな発見を生むことが多くあるからだ。大企業ではなく、スタートアップ企業やベンチャー企業が業界を先導することも十分に考えられる。

 3Dプリンター技術は、ロボティクスや材料、施工など複数の分野にまたがる。建設の専門家だけで議論を進めるのではなく、様々な分野の専門家と意見を交わしながら、国内での3Dプリンターの実用化に向けた議論を進めていきたい。(談)