DX(デジタルトランスフォーメーション)や脱炭素がコンクリートを大きく変えようとしている。3Dプリンターをはじめとするデジタル技術が、これまでの「限界」を打ち破りつつある。脱炭素への対応では、製造過程で排出する二酸化炭素(CO2)を減らすだけでなく、排出したCO2をコンクリートに固定してカーボンマイナスを目指す研究も活発だ。次代を拓く新素材開発で「超進化」を遂げるコンクリートの最前線をリポートする。

コンクリート超進化
DXと脱炭素で加速、次代を拓く新素材開発
目次
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ドイツで進む3Dプリンター活用 2階建て住宅を8日で「印刷」
世界各国で技術開発が進む建設用3Dプリンター。ドイツに本社を置くPERIは、わずか8日で2階建て住宅を「印刷」する。様々な企業と協力してプリンターや材料の開発、材料試験などを進めた成果だ。
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3Dプリントで曲面柱を実現 独自開発のモルタルで強度確保
建設現場への導入に向けて国内でも技術開発が進む3Dプリンター。清水建設は独自開発した繊維補強モルタルでプリントした埋設型枠を実用化して、高さ約4m、直径2m超の柱を8日間で施工した。
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試験方法ルール化が普及を後押し
日本でも多くの建設会社が3Dプリンター技術の開発に取り組んでいるが、実用化にたどり着いた例はまだ少ない。建設分野の3Dプリンター研究の第一人者である石田哲也・東京大学大学院教授に課題を聞いた。
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残り打設数量を素早く計測 AR技術を用いてアプリ開発
コンクリート打設工事の終盤で重要になるのが残り打設数量の算出だ。計測時は、短時間で正確に算出することが求められる。大林組はAR(拡張現実)技術を活用した残り打設数量計測アプリを開発した。
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凹凸をレーザー測量で可視化 不陸±2mm以内の床面に挑む
面積約6350m2のスケートリンクの不陸を±2mm以内に収める。この難題に取り組むため、清水建設などは表面を3Dレーザースキャナーで測量し、現場で凹凸を可視化。高い箇所を削って平らに仕上げた。
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自己治癒や3Dプリンターなど 先端技術に取り組む工場へ
會澤高圧コンクリート(北海道苫小牧市)は、デジタル技術の実装や脱炭素への対応など先端技術を次々に導入して注目を集める。自己治癒コンクリートと3Dプリンターの実用化に取り組む2つの生産現場をリポートする。
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CO2と廃コンクリートで新素材 ムーンショット型研究開発が始動
解体した建物の廃コンクリートとCO2を使って新たなコンクリートをつくるプロジェクトが進行中だ。ポルトランドセメントを用いず、水和反応さえ利用しない。最長10年に及ぶプロジェクトがスタートした。
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グリーンコンクリート構想に向け CO2を固定する技術に投資
三菱商事は北米や英国の脱炭素コンクリート技術のスタートアップ3社への資本参画・協業を積極的に進めている。各社の技術や知見を集約し、CO2固定量や事業規模を最大化する「グリーンコンクリート構想」を打ち出した。
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「CO2-SUICOM」の要素技術で現場打設での炭酸化を目指す
鹿島は、CO2排出量の収支をマイナスにする環境配慮型コンクリート「CO2-SUICOM」を約10年前に化学メーカーと共同開発した。その技術を応用し、新たなコンクリート開発に取り組んでいる。
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コンクリートにCO2を固定 カーボンマイナスを実現へ
排ガスから回収したCO2を地下に貯留する技術(CCS)が注目を集める中、大成建設はCO2を固定するコンクリートを開発した。固定するCO2の量を増やして、CO2収支をマイナスにする。鉄筋が使える点も特徴だ。
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低炭素コンクリートを地上にも クリア塗料で中性化を抑制
CO2排出量を80%削減したコンクリートで25万m3の施工実績を持つ大林組。これまでは地下躯体などに限られていた使用範囲を地上に拡大する。中性化対策として、表面に塗布するクリア塗料を開発した。
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低CO2セメントの白さ生かし着色
竹中工務店は自社開発した低CO2のセメントが持つ“白さ”を生かして発色性を高めた「ECMカラーコンクリート」を提供する。ポルトランドセメントでは出しにくかった、ピンクや黄といった明るい色への着色が可能になった。2020年12月に実物件に採用したことを発表した。
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工場が扱いやすい調合で普及目指す
普段使いできる環境配慮型コンクリート。長谷工コーポレーションは、こんなコンセプトで「H-BAコンクリート」を開発した。CO2削減効果は、普通コンクリートと比べて8.2~18.5%程度と、これまで紹介してきた大手ゼネコンの環境配慮型コンクリートに比べて低い。あえて削減率は低く抑えて、マンションの構造…
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工場から出るCO2を回収しセメント原料や建設資材に活用
太平洋セメントは、工場の排ガスに含まれるCO2を回収して再利用する技術を開発する。生コンやコンクリート製品のCO2排出量を今より少なくして、カーボンニュートラル社会でも受け入れられる材料にするための技術になる。
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低炭素や資源循環の等級新設 建築学会JASS5改定のポイント
2022年、日本建築学会のJASS5が10年ぶりに大改定される。低炭素等級や資源循環等級が盛り込まれるなど、カーボンニュートラルや地球温暖化対策に取り組む社会の動きに対応する。改定のポイントを見ていく。