全2761文字
PR

空き家・空き店舗がリノベーションされても、運営がうまくいかないと元の状態に戻ってしまう──。宮崎県日南市の飫肥(おび)で設計事務所を構える鬼束準三氏は、地元の古民家を買い上げて宿泊施設に再生。運営者としてエリア内のつながりを創出して、地域経済の循環を生み出すことに挑む。

 日南市飫肥は飫肥藩伊東家の城下町として栄えた。往時を思わせる町割には武家屋敷や洋館などが残る。1977年に旧武家町を中心とするエリアが重要伝統的建造物群保存地区(重伝建地区)に選定された。

 PAAK HOTEL 犀は、重伝建地区内の北端に位置する〔写真1〕。日南市へUターン後、2017年に設計事務所・PAAK DESIGNを設立した鬼束準三氏が、築約90年の古民家を改修。1棟貸しの宿として開業した。

〔写真1〕築約90年の古民家をリノベーション
〔写真1〕築約90年の古民家をリノベーション
古民家を宿泊施設へ改修した「PAAK HOTEL 犀」。宿泊予約時に予約ナンバーを付与し、現地でタブレットによりセルフチェックイン・チェックアウトできる。1棟貸し宿で、家族連れや女性グループの利用が多い。リノベーション協議会によるリノベーション・オブ・ザ・イヤー2021で「地域資源インテグレート賞」を受賞(写真:鬼束 準三)
[画像のクリックで拡大表示]
PAAK HOTEL 犀
  • 所在地:宮崎県日南市飫肥4-4-39
  • 構造・階数:木造、2階建て
  • 敷地面積:181.81m2
  • 延べ面積:91.13m2(改修前109.74m2
  • 開業時期:2021年3月31日(施工期間6カ月)
  • 営業内容:1棟貸し宿泊施設(1日1組限定・最大5人)
  • 営業時間:チェックイン午後3時、チェックアウト正午
  • 企画・設計・運営:PAAK DESIGN
  • 改修前:住宅(1933年8月完成)

 鬼束氏の活動は、古材・古家具の再利用、地域の特産品・農産物などのブランディングといった地域産業の再生まで多岐にわたる。設計者がまちづくりに関わる手本として、新たな可能性を見いだすことができる。

鬼束 準三氏 PAAK DESIGN 代表取締役
鬼束 準三氏 PAAK DESIGN 代表取締役
おにつかじゅんぞう:1983年宮崎県日南市生まれ。2008年工学院大学大学院建築学専攻修了後、東京で設計事務所・中央アーキ勤務。12年に独立し、鬼束準三建築事務所を設立。14年日南市にUターンして油津応援団の社員となり、油津商店街の店舗リノベーションを担当。17年日南市飫肥にてPAAK DESIGNを設立(写真:鬼束 準三)