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「壊されていく函館の古い建物を残したい」と、立ち上がった地元の若手3人。建築設計をはじめ、三者三様の専門性を生かしながら同じ組織として連携することで、移住の支援や古民家再生・リノベーションなどを通し、数々の「まちぐらし」を実現している。

 人口25万人の北海道函館市は、観光客が2019年度に536万人、コロナ禍の20年度でも310万人を誇る観光都市だ。主な観光地は函館山と、その山麓から港へ向かう斜面地に広がる西部地区に集中している。

 この地区は、函館市元町末広町伝統的建造物群保存地区として、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されている。地区内にある指定文化財の中にはレンガ造の倉庫として有名な金森倉庫群のように、商業施設に転用されている活用例もある。

 しかし、伝統的建造物であったとしても、特に傾斜地にある規模の小さい商店や住宅のような身近な建築物となると、なかなか活用しきれていないものが多いのが実情だ。

 また、人口は1984年の32万2000人をピークに減少傾向であり、高齢化や空き家・空き地の増加により、まちの活力の低下が顕著になっている。函館市は、2019年7月に函館市西部地区再整備事業基本方針を策定し、持続可能な同地区ならではの暮らしを実現すべく、対策を模索しているところだ。

不動産紹介からDIYの支援まで

 そのような地元の状況や取り組みを見て、自分たちでも何かできないかと立ち上がったのが、不動産会社である蒲生商事に勤務する蒲生寛之(がもうひろゆき)氏、富樫雅行(とがしまさゆき)建築設計事務所を営む富樫雅行氏、パン屋「tombolo(トンボロ)」店主の苧坂淳(うさかじゅん)氏だ。

 苧坂氏がパン屋のリノベーションを依頼した設計事務所にいた富樫氏と、富樫氏とつながりができた蒲生氏。同じ問題意識を持っていた3人は年齢も近く、すぐに意気投合した。

 彼らは伝統的建造物のほか、西部地区の履歴を物語る建物・街並みを次世代へ継承していくため、15年に「箱バル不動産」と呼ぶ団体を立ち上げ、16年に合同会社化した。団体名に「不動産」と付いているものの、その業務は多岐にわたる。函館のビンテージ建築の不動産紹介・プロモーションのほか、移住サポート、古民家再生・リノベーション、宿泊施設運営、DIYのサポートなどだ〔写真1図1〕。

〔写真1〕大三坂に面したビルをリノベ
〔写真1〕大三坂に面したビルをリノベ
函館市西部地区にある大三坂ビルヂング。日本の道100選にも選ばれた石畳の美しい大三坂に面した旧仁寿生命ビルを2017年にリノベーションした。箱バル不動産やSMALL TOWN HOSTEL Hakodate、蒲生商事、レストランなどが入居している(写真:箱バル不動産)
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〔図1〕プロジェクト体制の比較
〔図1〕プロジェクト体制の比較
本連載で以前に取り上げたスタジオ伝伝の例とプロジェクト体制を比較した。スタジオ伝伝が各分野の専門家に協力を仰ぐのに対して、箱バル不動産は、それぞれの専門分野を持ち寄る(図:馬場 義徳、佐藤 将之、安富 啓)
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