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2016年の事務所創設時から、共同主宰者2人がそれぞれ在宅勤務しているパーシモンヒルズ・アーキテクツ。分散ワークしながらスタッフを育成するコツをつかむまでの苦労を聞いた。

 1人で作業し続けるのが辛い──そう言ってスタッフが辞めたのは2019年12月のこと。パーシモンヒルズ・アーキテクツ(以下、パーシモンヒルズ)は約9カ月間育てた若いスタッフを手放すことになった。設計業務の補佐的な作業を一通り経験させ、そろそろプロジェクトを担当させようとしていた矢先のことだった。

オフィスを構えずスタート

 パーシモンヒルズ共同主宰の柿木佑介氏と廣岡周平氏は関西大学工学部建築学科の同じ研究室で学んだ旧知の仲だ。卒業後に別の進路を歩んでいた2人は16年、分散ワーク前提の設計事務所をスタートした。独立準備の段階から電話やチャットでやり取りしつつ、それぞれ自宅で作業しており、コミュニケーションや設計業務に支障は無かった。

 職住近接を理想としたきっかけは廣岡氏の原体験にある。「祖父が自宅1階に仕事場を構え、大人たちが出入りするのを間近に見ていた。一方、自宅から職場に通っている親を見て、時間がもったいないと感じていた」と廣岡氏。作業時間を確保するためにも、自宅と職場はできるだけ近い方がいいという考えに柿木氏も共感していた。

 状況が変わったのは19年4月のこと。ワークショップで講師を務めた際に知り合った学生2人から、「上京してパーシモンヒルズで働きたい」と打診があったのだ。

 柿木氏と廣岡氏は作業の手が増えれば助かる、と受け入れた。マンションの1室を借りて社宅兼オフィスを準備。大学を卒業したばかりのスタッフに対し、作図補助やパース作成、模型製作といった作業を通して育成していくことにした〔図1〕。

〔図1〕パーシモンヒルズ・アーキテクツの分散ワークスタイル
〔図1〕パーシモンヒルズ・アーキテクツの分散ワークスタイル
左はパーシモンヒルズ・アーキテクツが若手スタッフ専用の社宅兼オフィスを設けて分散ワークした際のイメージ。右は2021年4月時点の分散ワーク形態で、柿木氏と廣岡氏の自宅兼オフィスに通うスタッフをそれぞれ雇っている(写真:パーシモンヒルズ・アーキテクツ)
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 柿木氏と廣岡氏が外出のついでなどにスタッフの元を訪れて打ち合わせや作業指示を出す形で始めたが、通い過ぎるとプロジェクトが回らなくなる。また、日中は両氏が打ち合わせや現場に出ている時間も多く、スタッフの質問に答えるまで時間が空いてしまい、効率的に作業が進まないといった問題が増えていった。

 スタッフの入れ替わりはあったが、次々と退職。最後に残った1人も、孤独感に堪えられず辞め、社宅兼オフィスは19年12月に閉鎖した。