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今後、建築実務におけるAIやデジタルツールの活用が進み、情報収集は効率化しそうだ。一方、人間関係や実体験の乏しい若手にとっては、リアルなコミュニケーションが重要だとする声も多い。

 組織が培ってきた設計技術やノウハウをデジタル化し、継承しようという動きが出ている。先駆けとなりそうなのが、大成建設が開発中の「AI設計部長」。AI(人工知能)を活用した設計支援システムだ〔図1〕。

〔図1〕AIが過去事例から選んで設計担当者にリコメンド
〔図1〕AIが過去事例から選んで設計担当者にリコメンド
AIを活用した設計支援システム「AI設計部長」のイメージ図。DRはデザインレビューを表し、設計の段階や目的に応じて種類がある。こうした社内会議での指摘事項と対応などを基に設計技術に関するデータベースを構築。設計者の課題の参考になる情報をAIがリコメンドする仕組み(資料:大成建設の資料を基に日経アーキテクチュアが作成)
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 設計者が担当プロジェクトで納まりなどを検討する際、「RC造」「防水」などとキーワードを絞り込んでいけば、AIが参考になる竣工プロジェクトの図面や検討経緯を教えてくれる、という仕組みだ。

 AI設計部長は正解を提示しない。正解が分かれば経験の乏しい若手設計者にとっては好都合だが、正解に至った経緯を理解できず、応用力がつかないためだ。「あくまでリコメンドツール。何を採用するか決めるのは担当者自身だ」と、開発を手掛ける大成建設設計本部設計戦略部デジタル・ソリューション室シニア・アーキテクトの友景寿志氏は説明する。

 現段階では建築、構造、設備の3分野に分けてシステムを構築。建築分野については基本設計の終盤での活用を想定して、パイロット運用の準備を進めている。データベースに登録したのはISOに基づく品質マネジメントの記録。デザインレビューにおける指摘事項とその対応だ。基本設計段階の記録だけで約4万件を登録済みで、進行中のプロジェクトに関しても順次登録していく。

 構造分野は、基本設計の初期段階で、どんな構造形式を用いるか検討する際に活用する予定だ。設備分野については図面を画像分析して諸元表を自動作成したり、仕様選定を支援したりする。2023年ごろをめどに各分野の統合を図る考えだ。

 大成建設はAI設計部長の活用で、設計担当者の業務時間を5~10%削減することを目標としている。業務の効率化で、建て主のニーズに対してより多くの検討を行い、高付加価値な提案につなげることを狙う。