木造戸建て住宅でおなじみの筋交いは、壁量設計で用いる場合、壁倍率2倍となっている。しかし、実験などの結果を見ると出ないケースがあるという。耐力が出ない理由と、その影響を解説する。(日経アーキテクチュア)
地震力や風圧力を「水平力」という。この水平力に抵抗するのが耐力壁だ。木造軸組み工法の耐力壁は、筋交いと合板壁が代表的だが、古くは土壁も主要な耐力壁だった。
耐力壁の強さは、壁量設計では「壁倍率」という指標で表す。許容応力度計算では「許容せん断耐力」と呼び「kN/m」という単位で表す。
また、耐力壁の強さをどのように決めるかは、時代によって少しずつ変わっている。それに応じて、壁倍率も見直されてきた。最新の評価法は、2000年施行の改正建築基準法に合わせて修正されたものである。その特徴は、評価指標が3つから4つになったことだ。
新しく追加されたのが「靭(じん)性」の指標だ。靱性とは「変形が大きくなっても強度が落ちない性質」のことである。筋交いの壁倍率は、この新たな指標の採用前に決められた数値で、現在では、過大な評価になっている。
それをわかりやすく示したのが図1だ。筋交いや構造用合板といった耐力壁に水平方向の力を加えた際の変形を示している。横軸の変形が1/100ラジアン程度までは、おおむね壁倍率の比率で上がっている。ところが、最大強度から後の曲線は、大きく差があることが分かる。構造用合板がなかなか低下しないのに対して、筋交いは急速に低下してしまう。これは、記事冒頭の写真のように筋交いが座屈して耐力が一気に下がってしまうことが原因だ。筋交いは靭性が乏しいのである。本来、現在の評価法の下で実験して、壁倍率を改める必要がある。