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コンペやプロポーザルを勝ち抜いたのに、契約解除の憂き目に遭う設計者は少なくない。建築家の山本理顕氏は、プロジェクトの「炎上案件化」に備えた業務体制に切り替えざるを得なくなったと明かす。

 「選挙の結果、計画が白紙撤回されるのは仕方ない、と諦める人もいるが、言うべきことは言うべきだ」。こう強調するのは山本理顕氏。これまで、2度にわたって公共発注者を相手取った建築訴訟に挑んできた。

 最初の裁判は群馬県邑楽(おうら)町の新庁舎計画を巡るもの。2度目は熊本県天草市の新庁舎計画を巡るもので、いずれも首長の交代に伴う計画の白紙撤回が原因だ〔図1〕。

〔図1〕山本理顕設計工場は発注者にもの申してきた
〔図1〕山本理顕設計工場は発注者にもの申してきた
山本理顕設計工場は設計・監理契約を巡って自治体と丁々発止のやり取りをしてきた。山本理顕氏は1971年東京芸術大学大学院修了後、東京大学生産技術研究所原研究室生。73年山本理顕設計工場設立。2018年4月より名古屋造形大学学長を務める(写真上:日経アーキテクチュア、下:山本理顕設計工場、右:池谷 和浩、資料:山本理顕設計工場)
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 報酬が争点となったのは天草市訴訟だ。建築設計業務委託契約を途中解除した市が、基本設計と実施設計を合わせた契約金額約1億6498万円(税込み)のうち基本設計の成果に対する4860万円のみ支払ったのに対し、山本理顕設計工場JV側が実施設計の既履行分3000万円などの支払いを求めて争った。裁判は2020年1月、市側が約1600万円を支払うかたちで和解。山本氏らが請求の一部を勝ち取った。

 山本氏は天草市訴訟の決着から1年余りたった現在も憤りを隠さない。「設計料は設計事務所経営の生命線。プロポーザルに参加するだけでも我々は相当な額を持ち出している。何の補償もせず、ただ止めればいいというものではない」