地場工務店のミツヤジーホーム(長野市)は、水深3mの水圧がかかっても水をくい止める開口部を用いた「耐水害住宅」を開発。信州大学と共同で開催した公開実験で、実用化できる止水性能があることを確認した。
水深3mの洪水が発生しても住み続けられる──。ミツヤジーホームは2019年の台風19号で長野市内の住宅が深刻な浸水被害に遭ったのをきっかけに、「耐水害住宅」の開発に取り組んでいる。
21年3月には信州大学工学部建築学科の遠藤洋平助教と共同で、耐水害住宅の開口部の止水性能を検証する実験を公開で開催した〔写真1〕。同社の安江高治会長は「実用化できる止水性能のレベルに達した」と実験を総括した。
耐水害住宅は、1階が鉄筋コンクリート(RC)造で2階が木造の混構造を採用している。実験では、建物の内部を屋外に見立てた高さ3.5mの実験棟を用意した〔写真2〕。
RC造の躯体に取り付けた開口部に止水対策を施し、水深3mまで水をためて開口部からの漏水の有無や量を確認する。遠藤助教は「建物の外側に浸水深3mの動かない“静水”がある状態と同じ水圧を再現できる」と説明する。
住宅が浸水すると水圧が作用し、部材の変形による隙間が生じて水が漏れ出す。水圧は、受ける面積と水深に比例して大きくなる。耐水害住宅の開口部で水圧が最も大きいのは、面積が広くて地盤面に近い玄関ドアだ。面積が2.2m2の玄関ドアにかかる水深3mの水圧は2507kgf。腰高窓は中心部が地盤面から約1.9mの高さにあり、面積が0.9m2で同じ水深なら水圧は771kgfと、玄関ドアが上回る〔写真3〕。
既製品の玄関ドアや窓はこれほど大きな水圧を想定していないので、枠や扉が変形して隙間などから大量に漏水する恐れがある。耐水害住宅の開口部には既製品を使うので、ミツヤジーホームは様々な止水方法の効果を検証してきた。開発した止水方法を特許申請中だ。