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岡山県倉敷市は2018年7月の西日本豪雨で大きな被害を受けた。宇川建築計画事務所は、被災者支援を通じ、小さな工夫の積み重ねで復旧費用を大幅に抑える手法を考案。床上浸水を想定したU邸で実践した。

 岡山県倉敷市の宇川建築計画事務所では水害に備えた家づくりに取り組んでいる。きっかけは2018年7月の西日本豪雨だ。倉敷市真備町を中心に岡山県で約8000棟が全半壊、約7000棟が床上・床下浸水の被害を受けた。代表の宇川民夫氏はこう話す。「当社が設計した住宅も床上浸水の被害を受けた。復旧を手伝うなかで、床上浸水による建物の傷み方と復旧の難しさを知った」

 20年2月に竣工した「U邸」ではその経験に基づき、現実的な水害対策を数多く組み込んだ〔図1〕。それらは5項目に分類できる。(1)水を入れない、(2)水を抜きやすい、(3)ぬれても乾きやすい、(4)ぬれても再利用できる、(5)ぬれても交換しやすい。

〔図1〕5項目の浸水対策を満載
〔図1〕5項目の浸水対策を満載
U邸の矩計図 特殊な材料や工法は使用していないが、設計の工夫で床下浸水を防ぎ、浸水後に復旧しやすくする工夫が盛り込まれている(資料:宇川建築計画事務所の図面に日経アーキテクチュアが加筆)
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U邸の外観。西洋瓦とアクリル樹脂系の仕上げ塗り材で仕上げている。災害対策を意識して屋根には約4kWの太陽光発電パネルを載せている(写真:日経アーキテクチュア)
U邸の外観。西洋瓦とアクリル樹脂系の仕上げ塗り材で仕上げている。災害対策を意識して屋根には約4kWの太陽光発電パネルを載せている(写真:日経アーキテクチュア)
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 「通常は床と壁、断熱材、設備の更新などで1000万円近くかかる。この手法だと、その1割程度で復旧できる」と宇川氏は話す。

 (1)として基礎の底盤と立ち上がりの間に止水板を入れて床下への浸水を防ぎやすい構造とした〔写真1〕。(2)としては水抜き管を基礎の立ち上がり下部4カ所に設置した〔写真2〕。水抜き管には栓があり、床下浸水時に栓を開けて水を排出する。

水の浸入を防ぎ、排出しやすく

〔写真1〕止水板で浸水防止
〔写真1〕止水板で浸水防止
配筋を行う際に外周部の基礎の立ち上がりに樹脂製の止水板を入れている。打ち継ぎ部からの浸水を防ぐ効果がある(写真:宇川建築計画事務所)
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〔写真2〕水抜き管で排水
〔写真2〕水抜き管で排水
住宅用の水抜き管。床下浸水したときに管の中央部の栓を開けて排水する(左上)。基礎の内側から見たところ(左下)。基礎の外側から見たところ(右)(写真:日経アーキテクチュア、左下は宇川建築計画事務所)
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 床下浸水後、すぐに対策が必要なのは床下のカビ対策だ。湿度が高くなると木部にカビが生え、室内に侵入して健康被害を引き起こす。この対策が(3)だ。泥水を洗い流し、床下を扇風機などで乾燥させる。

 床下点検口は1カ所の住宅が多いが、この住宅ではキッチンと浴室、和室の押し入れの3カ所に設けている〔写真3〕。箇所が多いとホースを床下に入れて泥を洗い流す作業も容易だ。洗浄や乾燥をしやすくするため、床を根太組みにして和室の床下地にスギ板を用いた。スギ板は小割りで軽量なので床を解体しやすい。畳も外しやすいので、建て主が自力で乾燥促進を図れる。

床下を乾燥しやすく

〔写真3〕点検口から床下を乾燥
〔写真3〕点検口から床下を乾燥
床下点検口を複数設けることで、床下をホースで水洗いして扇風機で風を送って乾かすことが容易になる。左はキッチンの床下点検口、右は和室の押し入れの床下点検口(写真:日経アーキテクチュア)
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