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木材価格のかつてない高騰と品不足をもたらしているウッドショック。住宅分野に詳しい匠総合法律事務所の秋野卓生弁護士は、建て主などとの紛争をなるべく回避する努力が、設計者や施工者に求められていると説く。

Q1 ウッドショックは遅延の正当事由になる?

 災害、天候不良、感染症、法令の制定改廃、経済事情の変動──。匠総合法律事務所では住宅会社向けの建築工事請負契約約款を提供しており、様々な事態を想定してきた。それでも今回のウッドショックは想定していなかった。言うなれば「建材などの価格高騰およびこれに伴う納材遅延」となるだろうか。

 今回の状況は、災害と同等の不可抗力に当たる「経済事情の変動」とは言えないとみている。2008年のリーマン・ショックのような経済の落ち込みではなく、むしろ米国や中国で経済が好調に推移したことで起こったと考えられ、従来の契約約款の想定とは異なっているからだ。20年前半には新型コロナウイルスの感染拡大で中国の生産拠点が操業を停止し、住宅設備機器が納品されない事態に陥ったが、それとも異なる。

まずは建て主と認識を共有

 現場では、すでに様々な問題が顕在化している。

 一例が、建築条件付き土地売買契約だ。主要構造の木材がいつ手当てできるか分からないので、土地売買は決済できたとしても建物がいつ完成するか、事業者側で明確に返答できない状況が発生している。

 筆者が住宅会社などに繰り返し伝えているのは、こうした困難な事情がある場合、自らの正当性を声高に主張するのではなく、まずは常に契約の相手方の立場や状況をおもんぱかる必要があるということだ。

 このケースを購入者(建て主)から見れば、建物がいつ完成するか分からないのに土地だけを買わされ、住宅ローンの返済が始まることを意味する。不安や心配が生じるのは当たり前だ。無理に事業者の都合を押しつければ紛争になりかねない。

 現在は困難な状況にあるという点を、建て主と住宅会社とで共有し、解決に向かって契約当事者双方の見ている方向を合わせなければならない。具体的には、契約締結前に書面で合意事項について了承を得ることを推奨する。こうした考えの下、筆者は合意書のひな型を公開しているので参考にしてほしい〔図1〕。

〔図1〕合意書を交わしてトラブルを防ぐ
〔図1〕合意書を交わしてトラブルを防ぐ
匠総合法律事務所が作成した木材の樹種や工期、請負価格の変更に関する合意書の例。請負契約時と請負契約後に交わす方法がある(資料:匠総合法律事務所)
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