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今後の建築界において、木材のサプライチェーン強化は至上命題だ。ウッドショックのような出来事に左右されにくい流通や生産の在り方とは──。国産材を軸として、解決策を模索する動きが加速しそうだ。

 「確認申請制度がある以上、必ず設計図書は作成される。図面を読み解けば、建築時に必要となる木材の断面寸法や長さ、要求性能が正確に分かる。真に必要な材料が事前に判明するなら、木材には在庫という概念がなくなり、国産材流通のかたちは根本から変わる」

 そう力説するのは、木造住宅分野で急速に知名度を高めている大型パネル工法(構造材や間柱、断熱材、サッシなどを工場で一体化して現場で組み立てる工法)の受託加工を手掛けるウッドステーション(千葉市)の塩地博文社長。塩地社長はかつて三菱商事建材に在籍し、内装材としてヒットした天然壁材「モイス」の商品企画を仕掛けた人物で、住宅業界有数の論客だ。

塩地 博文氏(しおち ひろふみ)
塩地 博文氏(しおち ひろふみ)
ウッドステーション 社長(写真:ウッドステーション)

 三菱商事建材、ミサワホーム系列のテクノエフアンドシー、パナソニック系列のパナソニックアーキスケルトンデザイン、YKK APというそうそうたる顔ぶれから出資を受けてウッドステーションを設立したのが2018年。その頃から塩地社長は、自身が「仮想木材」と呼ぶ新たなサプライチェーン構想を提唱してきた〔図1〕。

〔図1〕仮想木材構想の仕組み
〔図1〕仮想木材構想の仕組み
ウッドステーションの塩地社長が提唱する仮想木材構想の概要。建物の統計情報を基に木材生産の最適化を目指す。設計・施工者と木材生産者が直接取引することでロスをなくし、価格変動リスクも避けられる(資料:取材を基に日経アーキテクチュアが作成)
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「木材生産も垂直統合を」

 需要家と供給者の直接売買を可能とするこの構想を一言で表すなら、「木材生産のDX(デジタルトランスフォーメーション)」あるいは「木造建築の垂直統合生産システム」ということになるだろう。

 起点となるのが、塩地社長が「仮想木材」と呼ぶ、設計データから得られた統計情報だ。製材工場や素材生産者と共有すれば、彼らは建築生産で必要となる断面寸法や長さなどを早く、正確に把握し、木材生産を最適化できるようになる。さらに、大型パネルの採用によって、輸送や在庫の管理にかかる流通コストを極限まで減らせる。

 設計者・施工者もコストダウン効果や大型パネルによる生産性向上を享受できる。

 構想の具現化は着々と進んでいる。会社設立以来、国内各地の木材生産者とタッグを組み、「大型パネル生産パートナー会」を発足。会員各社への技術供与に力を入れてきた。

 樹木の伐採、製材、パネル化まで一貫して手掛けるこのビジネスモデルは、19年にグッドデザイン賞(ビジネスモデル)を受賞。21年に入って、国産材大手である山長商店(和歌山県田辺市)の企業グループが大型パネルの生産ライン設置を決めた。

 「今回のウッドショックは、新型コロナウイルスの影響を悲観的に捉えた日本のバイヤーが輸入材の買い付けを手控えたところで、外国勢の逆張りにしてやられたという構図だ。こうした相場次第の調達は、事業継続性の観点からすると場当たり的で、問題が多い」。塩地社長は、身近な山の木材を周辺の需要地で無駄なく使い、再造林して再び使う体制への“レジームチェンジ”を強く呼びかける。