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調達のポイント

  • 本土で加工したCLTパネルを組み立てる工法で施工を効率化
  • 杭のない木造建物でコンクリート使用量を抑える

島根県の小さな離島にCLTパネルを組んだ木造のホテルが開業した。資材調達や人材確保が困難な離島の状況を踏まえ、加工済みのCLTパネルを持ち込むことで、現場での工種を減らすなど、施工の効率化を図った。

 着岸に向けて速度を緩めた船から島を眺めると、海辺の斜面に立つホテルが目に留まる〔写真1〕。海に面して全面ガラス張りの客室には、大開口の木製建具の位置にそろえてベッドが置かれ、壁一面が木材で仕上げられている。客室と交互に配置された半屋外のテラスには、向こうの景色が透けて見える木製の斜め格子がはめ込まれている〔写真2~4〕。

〔写真1〕CLTパネルで3層の木造ホテル
島の高台からの見渡し。左下に見えるのが「Entô」。すぐ近くに、島の玄関口である菱浦港(写真右端)がある(写真:鈴木 研一)
島の高台からの見渡し。左下に見えるのが「Entô」。すぐ近くに、島の玄関口である菱浦港(写真右端)がある(写真:鈴木 研一)
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目の前を通る船からは、全面ガラス張りの客室の雰囲気がよく分かる。建物は、床・壁にCLTパネルを用いた木造(写真:鈴木 研一)
目の前を通る船からは、全面ガラス張りの客室の雰囲気がよく分かる。建物は、床・壁にCLTパネルを用いた木造(写真:鈴木 研一)
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〔写真2〕旧施設を建て替えて木造に
〔写真2〕旧施設を建て替えて木造に
対岸から見た全景。正面は今回、旧施設を解体し、木造で建て替えた別館「Entô Annex NEST」。その右に見えるのは、既存施設を一部改修した5階建ての本館「Entô BASE」。各18室、計36室の客室がある。本館にはフロントやダイニングルーム、大浴場、バンケットホールなどが入る(写真:鈴木 研一)
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〔写真3〕無駄を排して隠岐の海だけを見せる
〔写真3〕無駄を排して隠岐の海だけを見せる
全18室が海に面した全面ガラス張り。間口を広く、奥行きを浅く取ることで目の前に広がる風景との一体感を高めている。ベッドの正面に、大判ガラスを入れたヒノキの木製建具がある。写真は2階と3階の西端にあるスイートルーム。床が畳敷きの部屋もある(写真:鈴木 研一)
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〔写真4〕専用の半屋外テラス
〔写真4〕専用の半屋外テラス
9室に備えた半屋外のプライベートテラス。そのうちの7室は、廊下からドアを入り、このテラスを通って客室に入る。テラスの廊下側は、CLTによる格子状の非耐力壁(写真:鈴木 研一)
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 「間口を最大限に広く取り、奥行きを浅くすることで、目の前に広がる風景の中に泊まっているような経験ができる客室を提案した。資材調達や人材確保の難しい離島なので、本土で加工したCLT(直交集成板)パネルを組み立てるプレハブ的な木造で設計した」。そう話すのは、このホテルを設計したマウントフジアーキテクツスタジオ(東京都渋谷区)共同主宰の原田真宏氏だ。

 建物は地下1階・地上2階建て。海に面した間口73m、奥行き6.1mの薄い板状の建物に18室の客室が入る〔写真56〕。基礎などの一部は鉄筋コンクリート造だが、3層ともCLTを用いた木造だ。

〔写真5〕外廊下の客室も
〔写真5〕外廊下の客室も
海とは反対側から見る。一部は外廊下で、屋外から客室に入る。外部に現れる壁は、CLTの躯体の外側に防水層を設け、木材の外装材を張っている。左に見えるのは、本館との連絡路であるホール空間(写真:鈴木 研一)
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〔写真6〕板状の薄い建物
〔写真6〕板状の薄い建物
船が発着する菱浦港から見る全景。海に面した間口73m、奥行き6.1mの薄い板状の建物(写真:鈴木 研一)
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