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建築家やデザイナーが公共トイレを東京都渋谷区に設置するプロジェクトが進行中だ。隈研吾氏が「森の集落」、伊東豊雄氏が「3本のキノコ」の形をした施設をデザインした。渋谷から日本のトイレが変わろうとしている。

 日本財団は誰でも快適に利用できる公共トイレを設置するプロジェクト「THE TOKYO TOILET(ザトウキョウトイレット)」を、2020年夏から展開している。性別や年齢、障害の有無に関係なく、気持ちよく使えるトイレの在り方を渋谷から発信していく。「暗い」「汚い」「臭い」「怖い」といった、公共トイレにつきまとう負のイメージを払拭するのが狙いだ。

 プロジェクトには安藤忠雄氏や坂茂氏、槇文彦氏ら16人の著名な建築家やデザイナーなどが参画している。21年8月中旬時点で12カ所が完成し、22年3月末までに合計17カ所の公共トイレを設置する。設計・施工は大和ハウス工業が担当し、トイレ機器はTOTOが提供する。

 直近に供用を開始した3つの施設には、従来の公共トイレでは手薄だった部分に様々な工夫が盛り込まれている。キーワードは「安心・安全」と「ジェンダーレス」だ。隈氏と伊東氏に加え、佐藤可士和氏がデザインしたトイレからひもといていこう。

用途で個室を分ける新発想

 隈氏による「鍋島松濤公園トイレ」は、森の中にある集落のようなたたずまいをしている〔写真1〕。5つの個室(小屋)を分棟とし、「車椅子用」「子育て用」「身だしなみ配慮(中で着替えができる)」と用途を明確にした。そして個室ごとに機器や備品、内装を変えている。性別で入れる人を分けない、新しい発想だ。隣り合う男性用の小便器トイレも、手すりの有無で個室に分けた〔写真2〕。

隈 研吾氏

〔写真1〕トイレを5つに分棟して用途を明確に
〔写真1〕トイレを5つに分棟して用途を明確に
緑豊かな鍋島松濤公園内にある「鍋島松濤公園トイレ」。スギ板のルーバーで覆った5つの独立棟から成る。森の集落をイメージした(写真:日経クロステック)
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〔写真2〕小便器トイレも個室に

平面図 用途別トイレが3つ、小便器トイレが2つある(資料:大和ハウス工業)
平面図 用途別トイレが3つ、小便器トイレが2つある(資料:大和ハウス工業)
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男性用の小便器トイレも、手すりの有無で2つの個室に分けた。トイレの内部には木の飾りがある(写真:日経クロステック)
(写真:日経クロステック)
(写真:日経クロステック)
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 個室と個室の間には木チップを敷いた小道を設け、通り抜けられるようにしている。「風通しが良いポストコロナ時代にふさわしい公共トイレができた」と隈氏は語る。

 各個室はスギ板のルーバーで覆った。厚みがある耳付きの吉野杉の板を240枚使っている。こうして森の集落らしさを演出している。