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公共トイレに求められる機能は複雑化している。発注者の要求に加えて社会的な要請を踏まえた設計が必要になる。多くの要素を組み込むためにトイレメーカーの設計支援を利用することも1つの解決策だ。

 公共トイレ用の設備機器を製造販売するメーカーは設計支援に積極的だ。設計支援は計画立案のための情報提供とプラン提案に大別される。

 情報提供の1つはトレンド分析。メーカーでは性的マイノリティーへの対応などの社会的な要請や、各種施設の利用者ニーズについて調査している。もう1つは利用実態のリポート。引き渡し後に調査し、利用者の声をまとめている。これらを活用することで、設計者はトイレの計画に説得力を持たせることができる。

 プラン提案は設計者などから聞き取りした上で行われる。メーカーの技術担当者が計画中のスペースに対して複数の参考プランを立案。これらを比較検討することで計画の方向性を決めやすくなり、機器選定の考え方も明確になる。

多様性や子ども対応に強み

 設備機器メーカーのTOTOによる取り組みを例に、設計支援の流れを見ていく。設計者などから相談を受けた営業担当者は全国4カ所にある公共トイレの専門ショールームであるテクニカルセンターにつなぐ。同センターには機器が多数展示されるとともに、公共トイレに欠かせない多機能トイレの広さが実感できる展示もある。

 テクニカルセンターには技術担当者が所属。設計者などにセミナー形式で情報提供を行う。「最近は性的マイノリティー対応や多機能トイレへの利用集中を防ぐ機能分散、商業施設における女性客対応などの需要が高い」と同社東京プレゼンテーショングループ主席レストルームプランナーの松沢雪子氏は話す。

 セミナーを経て、計画の方向性が定まった段階で設計者などから要件を聞き取りする。そして与条件の優先順位を変えて3案程度プランを作成する。「あくまで参考プランなので、平面図のみ作成するのが基本。また柱型や配管・コンセント位置などは考慮しない」(松沢氏)

 トイレメーカーの専門性が発揮されるテーマの1つが多様性対応。性的マイノリティーや障害者などの利便性に配慮したトイレだ。ポイントは男女共用トイレの配置。これにより車椅子対応の多機能トイレの利用集中を避けたり、性的マイノリティーの利用者の心理的な負担を軽減したりする効果が期待できる。

 同様に保育園や幼稚園など子どものためのトイレも介助や自立に向けた動作補助など独自のノウハウが求められるため、情報ニーズが高い。

 また、多機能トイレの便房内の機器配置についても、想定する利用者の身体状況などにより、広さや仕様が異なる。このスペースのプラン提案も需要がある。

 メーカーから設計支援を受ける上で製品採用などの条件は特にないが、プランと不可分に結びついた機器は採用率が高いという。具体的には便房の数を増やせるコンパクト便器や非接触型洗浄の便器、無電源タイプのリモコン、子ども用の手すり付き機器などだ。最近では維持管理を省力化する提案も歓迎される。空きトイレの表示システム、センサーでトイレットペーパーや水せっけんの欠品を通知するシステムなどだ。

 「トイレは改修需要が多いこともあり、維持管理の改善需要は高い。この部分に配慮した提案にも力を入れていきたい」と松沢氏は話す。