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国に先行して再生可能エネルギーの普及に取り組む自治体がある。長野県は独自の支援策を進め、京都府・市は全国で初めて建築士による再エネに関する説明義務化に踏み切った。国が採用する可能性もある。

 国土交通省など3省の取りまとめの特徴は、自治体による先行事例を例示した点にある。国の制度設計の参考にするためだ。前述の通り、国の創エネ普及策は未決定の部分が多い。先行する自治体を見ることで、今後の規制と支援策を展望する。

[長野県]
発電可能量を見える化 共同購入で住民負担減らす

 長野県松本市に住む40代の夫婦は、住宅のリフォームに当たって太陽光発電設備の導入を検討している。最初は、自宅の屋根でどの程度の発電ができるのか分からなかった。インターネットで検索すると、長野県が公開している「信州屋根ソーラーポテンシャルマップ」が見つかった〔図1〕。

〔図1〕太陽光発電の適正を地図で表示
〔図1〕太陽光発電の適正を地図で表示
長野県がウェブで公開している信州屋根ソーラーポテンシャルマップ。2019年12月に県内のほぼ全域を公開した。例として長野駅周辺エリアを表示。太陽光発電・太陽熱発電のポテンシャルを地図上で「赤=最適」、「黄=適」で表示している(資料:長野県)
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 画面の地図上で自宅をクリックすると、「最適」というマークが表示された。太陽光による予想発電量や相談先なども一覧で見ることができ、夫婦は今、屋根に発電設備を載せる方向で検討を続けている──。

 長野県は2019年に都道府県で初めて「気候非常事態」を宣言した自治体で、再生可能エネルギーの普及に積極的に取り組む。特に力を入れるのが、「全ての屋根に太陽光を」を合言葉に進める住宅への導入だ。

 ポテンシャルマップの公開もその一環。航空測量や気象データなどから個別の住宅の発電予想量を推計した。屋根面積20m2以上の住宅で、年間日射量1300kWh/m2以上が「最適」、同1100kWh/m2以上が「適」と分類している。

 21年に入って、さらなる普及のため2つの支援策を開始した。1つは補助制度で、既存住宅に太陽光発電設備と蓄電池を導入する場合に1戸当たり20万円を補助する。7月から事業を開始した。

 もう1つは、太陽光発電設備を導入したい消費者を募ってまとめて安く購入する仕組み。自治体がバックアップする共同購入は珍しい。補助制度に先行して6月から始めた。

 長野県ゼロカーボン推進室の阿久津裕司氏は「製品を自由に選びたい場合は補助金を、こだわりがない場合は共同購入を検討してほしい」と事業のすみ分けを説明する。

 共同購入の特徴は、県が予算ゼロで始められる点にある。県が支援事業者と協定を結び、事業者が希望者を募る。発電設備の設置は、支援事業者が入札で選定した施工者がまとめて請け負う〔図2〕。

〔図2〕県が旗を振って共同購入
〔図2〕県が旗を振って共同購入
長野県が2021年6月に募集を開始した太陽光発電設備の共同購入事業の仕組み。県が支援事業者と協定を結び、募集は支援事業者が担う(資料:長野県)
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 6〜9月の募集期間で、希望者は800人を超えた。発電設備の施工者として選ばれたサンジュニア(長野県須坂市)業務本部の中村嘉寿良副本部長は、「予想をはるかに超える数字だった。まだまだニーズの掘り起こしは可能だと実感した」と驚く。